観劇 『飛龍伝2010 ラストプリンセス』 / 『相対的浮世絵』
『飛龍伝2010 ラストプリンセス』
作・演出:つかこうへい
出演:黒木メイサ、徳重聡、舘形比呂一、矢部太郎、馬場徹、東幹久 他
<ストーリー>
全共闘の委員長に祭り上げられた東大の神林美智子は作戦の為、恋人であり作戦参謀の桂木順一郎によって美智子に好意を寄せる学生の敵・機動隊員の山崎一平のもとに送り込まれる。
山崎と共に暮らすうちに二人は愛し合うようになっていくが、時代は彼等の幸せを許す事はなく、ついに学生と機動隊が激突する11・26最終決戦の日が訪れる・・・
観劇日:2010年2月12日 ソワレ@新橋演舞場
2010年観劇振り返り感想その一。※二本共にネタバレです!
つかこうへいの遺作となった作品。
私にとって初つか作品の観劇が遺作となろうとは。
学生運動の話しなので陰欝でシリアスな舞台を想像していたのですが、意外にコミカルな場面が多かったのが驚きでした。
東幹久さんなんて、あのアデランスのダンスを披露してくれましたから(笑)
メイサちゃんに「メイサ!お前もやれ!」とダンスを強要してメイサちゃんが本気で困っていた(笑)
時事ネタの笑いが多くて、鳩○幸夫という登場人物が「小○は厄介なんだよ。」と言ったり、了いにはアバターの仮装まで出てきてびっくりです。
『鋼鉄番長』でメタルさんのアバターを観た時の既視感はこの舞台だったのか・・・
一部が一時間という短さで纏めなくてはならないからか、または台詞が長いせいなのか分かりませんが、出演者の台詞が早いし聞き取りづらかった。
ただでさえ複雑な時代・人物背景なのに、マシンガントークでもしているようなやり取りをされて、前半観客を置いてきぼりにしていた感がありました。
多分これがつか作品なのでしょうけども・・・。
また公演初日から数日経つのになぁ~と未完成な印象を受けてしまいました。
また下ネタ多用だったり、シリアスシーンとコミカルなシーンの境の無さ。
今までつか作品を観たことが無いのですがこんな感じなのでしょうか・・。
また何故美智子を崇拝する学生が居たのか、美智子が山崎を深く愛する様になったのか等、話しが端折られていたので物語の重要な部分をもう少し丁寧に描いてくれたらなぁと思いました。
私的に結構残念な事が多かったのですが、主演の黒木メイサちゃんは素晴らしかった。
彼女が全てを救うと言っても過言ではないです。
緩急の差を上手く演じ、委員長として全共闘率いて闘う姿と、一人の女性として苦悩し、そして山崎を愛する姿の演じ分けが見事でした。
またアクションは格好良く、ダンスも上手い。
美人でオーラも有るのでこれからが楽しみだなと思わせる女優さんでした。
東幹久さんは人間の弱さや欲深さ、残忍さを上手く演じられており、やや纏まりに欠けるストーリーを再びその演技で纏めあげ、ラストまで持って行く役割を果たされていたなと思いました。
山崎役の徳重さんはと言いますと…う~ん…台詞をかなり噛んでいたし、重要なシーンで台詞を間違えたり、とても残念だったなぁ。アクションもキレが無かったですし…
この作品、メイサちゃんに救われていますね。
カーテンコールでは、赤いドレス(しかもボディコン風)に着替えて登場した瞬間、「おお~」と言う歓声があがりました(笑)
カーテンコールが一番楽しかった様な気がするなぁ。
アクロバットが凄かったし、キャスト全員でのダンスも良かった。
そして馬場徹さんが格好良くて釘付けになった(笑)
最後に客席に向けてメイサちゃんが「気をつけてお帰り下さい」と言ってくれたのが嬉しかったです。
『相対的浮世絵』
作:土田英生
演出:G2
出演:平岡祐太、袴田吉彦、安田顕、内田滋、西岡徳馬
<ストーリー>
人生の曲がり角にさしかかり、それぞれにややこしい問題を抱えてしまっている岬智朗(袴田吉彦)と、高校時代の同級生、関守(安田顕)。彼らに救いの手をさしのべたのは、10数年前、高校生のときに事故で死んだはずの、彼らの同級生、遠山大介(内田滋)と岬の弟、達朗(平岡祐太)だった。
うしろめたい気持ちを抱えながら、遠山と達朗からの救いの手を頼りにするようになる二人。そこへ現れたのは、遠山、達朗と知り合いだという、自分の思い出ばかり語りたがる初老の男、野村淳(西岡徳馬※徳は旧字)。
「前田? 髪の長い子か?」
「そうそう。あいつは確かに可愛かったな。」
いつも一緒にいた高校時代の、他愛のない思い出話に盛り上がる4人。そして、彼らを見守る野村。やがて、話は……
引用:『相対的浮世絵』公式HP http://www.g2produce.com/other/soutaiteki/
観劇日 :2010年3月26日 マチネ@Bunkamuraシアターコクーン
平岡祐太初舞台、『相対的浮世絵』を観ました。
座席が選べるということで、突発的にチケット購入。
指定できたのでかなりの良席!
ど真ん中の前から5列目で凄く舞台から近かった。
お陰で各登場人物の心理を細部まで読み取る事がポイントの舞台だったので、表情が良く見える席で本当に良かったです。
高校時代、火事で死んだはずの弟・達朗と友人の遠山に十数年の時を経て再会した智朗と関。
そんな四人を見守る一風変わった謎の男・野村・・・・
火事から生き残った自分達を怨んで出てきたのではないかと二人は疑うが、どうやら違うらしい。
怨んでなどいない、助けたいんだと言うのだから逆に怖い。
智朗と関は様々な“深刻な悩み”を抱えていて、死んだ二人は彼等の問題を解決していく。ある日智郎が会社の金を使い込むという“事件”を解決すべく達郎と遠山は一日で600万という大金を用意し、“事件”を解決する
。
そんな二人の行動に監視役としてこの世に降り立った野村は「全て元通りにしろ、そうしなければ二度とこの世に出ることは出来なくなる」と告げる。
一方生き残った智郎と関の二人は蘇った二人に恐怖心と猜疑心が拭えない為、二人の真意を探るべく四人で話し合う場を設ける。
楽しかった思い出話の果てについに「あの日」の話をすることに。
あの火事の記憶を辿り、それぞれが「あの日」を語るうちに怨む気持ちを捨てる事など無理であると悟る4人。そして次第に嘘がつけなくなる智郎と関。そんな二人に「全てを元に戻さなければ自分達が消えてしまう。だから今まで“解決”してきた事を戻してほしい」と頼む達郎と遠山。
自分の人生を投げ売ってまで死んでしまった人間を救うか?
いや・・死んでしまった人間よりも今を生きている自分の人生を守る方が大切だ。
一見酷いが誰もが抱く“本音”を代表して二人が吐露しているかのようで実に人間臭く、共感出来る反面、二人と同様に罪悪感を抱いてしまった。
結局二人は自分の人生を犠牲にして死んだ二人を救うのだが、救われたはずの二人は「なんかスッキリしたよ」とあの世へ帰ってしまうのだった。
生きる者と死んだ者の相対する四人の姿はこの世の不条理と人間の欲深さを描いたまさに「浮世絵」である。
死んだ二人は復讐する為にこの世に戻ったわけではないと言っていたが、結果的には二人に復讐を果たしたような気がした。
もし、これが彼らの真の目的だったらと考えると恐ろしい・・・全く違った舞台になる。
ブラックコメディーと言うかファンタジーといも言える不思議な雰囲気の作品。
5人とも実に良い演技でしたが特に内田滋さんと安田顕さんが良かったですね。
火事の様子を語る内田滋さんの狂気を帯びた演技は圧巻。
安顕のいや~な演技も心に迫るものがあり嵌り役だなと思いました。
(おかっぱ頭も似合ってました(笑))
作・演出:つかこうへい
出演:黒木メイサ、徳重聡、舘形比呂一、矢部太郎、馬場徹、東幹久 他
<ストーリー>
全共闘の委員長に祭り上げられた東大の神林美智子は作戦の為、恋人であり作戦参謀の桂木順一郎によって美智子に好意を寄せる学生の敵・機動隊員の山崎一平のもとに送り込まれる。
山崎と共に暮らすうちに二人は愛し合うようになっていくが、時代は彼等の幸せを許す事はなく、ついに学生と機動隊が激突する11・26最終決戦の日が訪れる・・・
観劇日:2010年2月12日 ソワレ@新橋演舞場
2010年観劇振り返り感想その一。※二本共にネタバレです!
つかこうへいの遺作となった作品。
私にとって初つか作品の観劇が遺作となろうとは。
学生運動の話しなので陰欝でシリアスな舞台を想像していたのですが、意外にコミカルな場面が多かったのが驚きでした。
東幹久さんなんて、あのアデランスのダンスを披露してくれましたから(笑)
メイサちゃんに「メイサ!お前もやれ!」とダンスを強要してメイサちゃんが本気で困っていた(笑)
時事ネタの笑いが多くて、鳩○幸夫という登場人物が「小○は厄介なんだよ。」と言ったり、了いにはアバターの仮装まで出てきてびっくりです。
『鋼鉄番長』でメタルさんのアバターを観た時の既視感はこの舞台だったのか・・・
一部が一時間という短さで纏めなくてはならないからか、または台詞が長いせいなのか分かりませんが、出演者の台詞が早いし聞き取りづらかった。
ただでさえ複雑な時代・人物背景なのに、マシンガントークでもしているようなやり取りをされて、前半観客を置いてきぼりにしていた感がありました。
多分これがつか作品なのでしょうけども・・・。
また公演初日から数日経つのになぁ~と未完成な印象を受けてしまいました。
また下ネタ多用だったり、シリアスシーンとコミカルなシーンの境の無さ。
今までつか作品を観たことが無いのですがこんな感じなのでしょうか・・。
また何故美智子を崇拝する学生が居たのか、美智子が山崎を深く愛する様になったのか等、話しが端折られていたので物語の重要な部分をもう少し丁寧に描いてくれたらなぁと思いました。
私的に結構残念な事が多かったのですが、主演の黒木メイサちゃんは素晴らしかった。
彼女が全てを救うと言っても過言ではないです。
緩急の差を上手く演じ、委員長として全共闘率いて闘う姿と、一人の女性として苦悩し、そして山崎を愛する姿の演じ分けが見事でした。
またアクションは格好良く、ダンスも上手い。
美人でオーラも有るのでこれからが楽しみだなと思わせる女優さんでした。
東幹久さんは人間の弱さや欲深さ、残忍さを上手く演じられており、やや纏まりに欠けるストーリーを再びその演技で纏めあげ、ラストまで持って行く役割を果たされていたなと思いました。
山崎役の徳重さんはと言いますと…う~ん…台詞をかなり噛んでいたし、重要なシーンで台詞を間違えたり、とても残念だったなぁ。アクションもキレが無かったですし…
この作品、メイサちゃんに救われていますね。
カーテンコールでは、赤いドレス(しかもボディコン風)に着替えて登場した瞬間、「おお~」と言う歓声があがりました(笑)
カーテンコールが一番楽しかった様な気がするなぁ。
アクロバットが凄かったし、キャスト全員でのダンスも良かった。
そして馬場徹さんが格好良くて釘付けになった(笑)
最後に客席に向けてメイサちゃんが「気をつけてお帰り下さい」と言ってくれたのが嬉しかったです。
『相対的浮世絵』
作:土田英生
演出:G2
出演:平岡祐太、袴田吉彦、安田顕、内田滋、西岡徳馬
<ストーリー>
人生の曲がり角にさしかかり、それぞれにややこしい問題を抱えてしまっている岬智朗(袴田吉彦)と、高校時代の同級生、関守(安田顕)。彼らに救いの手をさしのべたのは、10数年前、高校生のときに事故で死んだはずの、彼らの同級生、遠山大介(内田滋)と岬の弟、達朗(平岡祐太)だった。
うしろめたい気持ちを抱えながら、遠山と達朗からの救いの手を頼りにするようになる二人。そこへ現れたのは、遠山、達朗と知り合いだという、自分の思い出ばかり語りたがる初老の男、野村淳(西岡徳馬※徳は旧字)。
「前田? 髪の長い子か?」
「そうそう。あいつは確かに可愛かったな。」
いつも一緒にいた高校時代の、他愛のない思い出話に盛り上がる4人。そして、彼らを見守る野村。やがて、話は……
引用:『相対的浮世絵』公式HP http://www.g2produce.com/other/soutaiteki/
観劇日 :2010年3月26日 マチネ@Bunkamuraシアターコクーン
平岡祐太初舞台、『相対的浮世絵』を観ました。
座席が選べるということで、突発的にチケット購入。
指定できたのでかなりの良席!
ど真ん中の前から5列目で凄く舞台から近かった。
お陰で各登場人物の心理を細部まで読み取る事がポイントの舞台だったので、表情が良く見える席で本当に良かったです。
高校時代、火事で死んだはずの弟・達朗と友人の遠山に十数年の時を経て再会した智朗と関。
そんな四人を見守る一風変わった謎の男・野村・・・・
火事から生き残った自分達を怨んで出てきたのではないかと二人は疑うが、どうやら違うらしい。
怨んでなどいない、助けたいんだと言うのだから逆に怖い。
智朗と関は様々な“深刻な悩み”を抱えていて、死んだ二人は彼等の問題を解決していく。ある日智郎が会社の金を使い込むという“事件”を解決すべく達郎と遠山は一日で600万という大金を用意し、“事件”を解決する
。
そんな二人の行動に監視役としてこの世に降り立った野村は「全て元通りにしろ、そうしなければ二度とこの世に出ることは出来なくなる」と告げる。
一方生き残った智郎と関の二人は蘇った二人に恐怖心と猜疑心が拭えない為、二人の真意を探るべく四人で話し合う場を設ける。
楽しかった思い出話の果てについに「あの日」の話をすることに。
あの火事の記憶を辿り、それぞれが「あの日」を語るうちに怨む気持ちを捨てる事など無理であると悟る4人。そして次第に嘘がつけなくなる智郎と関。そんな二人に「全てを元に戻さなければ自分達が消えてしまう。だから今まで“解決”してきた事を戻してほしい」と頼む達郎と遠山。
自分の人生を投げ売ってまで死んでしまった人間を救うか?
いや・・死んでしまった人間よりも今を生きている自分の人生を守る方が大切だ。
一見酷いが誰もが抱く“本音”を代表して二人が吐露しているかのようで実に人間臭く、共感出来る反面、二人と同様に罪悪感を抱いてしまった。
結局二人は自分の人生を犠牲にして死んだ二人を救うのだが、救われたはずの二人は「なんかスッキリしたよ」とあの世へ帰ってしまうのだった。
生きる者と死んだ者の相対する四人の姿はこの世の不条理と人間の欲深さを描いたまさに「浮世絵」である。
死んだ二人は復讐する為にこの世に戻ったわけではないと言っていたが、結果的には二人に復讐を果たしたような気がした。
もし、これが彼らの真の目的だったらと考えると恐ろしい・・・全く違った舞台になる。
ブラックコメディーと言うかファンタジーといも言える不思議な雰囲気の作品。
5人とも実に良い演技でしたが特に内田滋さんと安田顕さんが良かったですね。
火事の様子を語る内田滋さんの狂気を帯びた演技は圧巻。
安顕のいや~な演技も心に迫るものがあり嵌り役だなと思いました。
(おかっぱ頭も似合ってました(笑))
観劇 『時計じかけのオレンジ』
原作:アンソニー・バージェンス
演出:河原雅彦
出演:小栗旬、橋本さとし、武田真治、吉田鋼太郎、キムラ緑子、石川禅、高良健吾、ムロツヨシ、矢崎広、桜木健一、山内圭哉 他
< あらすじ >
舞台は全体主義の近未来社会。
主人公アレックスはジョージ、ディム、ビート等“ドルーグ”達と共に奇妙な“ナッドサッド語”を使いながら欲望の赴くまま悪行の限りを尽くす。
そして人々をゲームのように襲撃していくアレックスはついに人を殺してしまう。
仲間に裏切られたアレックスは刑務所へ。そこで自由を望むアレックスは刑期を短縮できるという治療方法『ロドビコ療法』の存在を知り、治療の実験台になることを望んだ結果治療を受けることになるが・・・
観劇日:2011年1月8日(土)マチネ@赤坂ACTシアター

言わずと知れたスタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』↓。
昔何だか観てはいけない映画という認識をしていた程衝撃的な作品ですが、なんとこれを舞台化すると知った時はどうするんだろう?と思いました。
しかし舞台化は初めてではなく、現地では既に上演されており、日本では初公演と言う事になります。
私の観劇初めがこの『時計じかけのオレンジ』。
新年早々よくこんなエ○グ○バイオレンスな舞台を上演したな~と思いましたが、観に行く私も私だなと(笑)
公式に『疾走するウルトラバイオレンス』とありますが、まさにその通りな舞台でした。
強烈な光と激しい音の洪水、LEDスクリーンの映像を多用する視覚と聴覚に刺激を与える演出。
両サイド鏡ばり(?)な舞台と主人公達の奇抜なファッションで幕開けと共にカオスな世界に引きずり込まれてしまった。
オープニングから異様で無機質な雰囲気が漂う。
まるで異星人が地球に降り立ったかのような役者の登場の仕方がとにかく異様。
別次元の人間の様で居心地が悪くなる。
冒頭のアレックス等ドルーグ達の歌と踊りは明るく軽快でも歌詞が過激でそのギャップが凄まじい。
無邪気さの中にある狂気・・・純粋悪と言うのでしょうか。それが現れていて恐ろしさが際立つ。
そして小栗君演じるアレックスとその仲間たちは顔面白塗りで目には黒いアイライン、真っ白なつなぎと黒い帽子・・・映画そのもののスタイルで登場。これがとても不気味なのです・・・
※以下ネタばれです。
インモラルがモラルな世界で、人間の罪深い潜在的欲望の具現化と言えるアレックスの視点から『善』と『悪』、『人間』というモノを見せられる。
ロドビコ療法を施されたアレックスは暴力や性に対して拒絶反応を起こすようになるが、これは自ら望んで起きる反応ではなく、他者が“除去”し“与えた”姿である。
自ら善と悪の判断が出来てこそ、理性で己の欲望を抑え込むことができてこそ『人間』である。
アレックスは全体主義の社会で生きる「時計じかけのオレンジ」=若さに満ち、見た目は健康健全な若者の様であっても、中身は非人間的で無機質であり、理性も働かず欲望のままに生きる。
そして全体主義国家にいいようにされた(ロドビコ療法をされた後の成れ果て)異質なモノという事かなと思ったのでありました。
またアレックスを見た牧師のセリフと、エンディングの歌と映像に幾度か出てくる「NO CHOICE、NO LIFE」が本作のテーマではないかと。
パンクオペラと言うだけあってバンドの生演奏の迫力が凄い。
役者も歌い踊る!橋本さとしさんと鋼太郎さんの歌声と存在感は圧巻で、やはりお二人が突出していたように思えた。
しかし主演の小栗君も見せるし(←これはビックリ)魅せます。
ロドビコ療法前後のアレックスの演じ分けは上手かったですし、台詞も聞き取りやすかったです。
そしてアレックスの仲間を演じた高良君等若手勢の演技も勢いがありました。
驚くシーンが色々とあり、客席を巻き込むある演出は本当にビックリした。
まさか近くの空いている席に小栗君が来て暴れるとは思わず一瞬何が起きているんだ!?と思いました。
それ以上に驚いたのが休憩時間。
休憩開始後暫く橋本さとしさんと緑子さんがアドリブ混じりでトークしているのもビックリでいたが、まさか小栗君が休憩時間も壇上で絶叫し続けるとは・・・
休憩行けないじゃないか!と(笑)
友人曰く、途中から映像に切り替わってるっぽいとの事でしたが、私はそんなこと疑わずに観ていました(笑)。
あれ実際どうなっていたのでしょう?本当に斬新な演出でした。
映像の多様や歌の入れ方、バンドの生演奏等は少し新感線に似ているなと思ったのですが、既視感ある中にも未体験の演出が仕掛けてあり、全体的にみるとやはり前衛的な舞台だったなと思いました。
ちなみに舞台は原作よりで、ラストも原作と同じだとか。
映画のエンディングの後「まだショーは続くよ」となり、原作通りの成長したアレックスが現れるのですが、映画公開時に色々あったようですね。
原作のエンディングがあるのと無いので全く異なると思います。
若さゆえの行いだから仕方がない、抗えないと言ったような台詞・・・
これそんな台詞で今までの行いを纏めて普通の生活おくっているなんて、かなり恐ろしい・・・。
う~ん・・・新年早々色々な意味で刺激的な舞台でした。
余談ですが、カーテンコールが面白かった。
橋本さとしさんと鋼太郎さんがムロツヨシさんを毎回弄るんです(笑)
ムロさんの帽子を客席に投げたり、ムロさん落とそうとしたり。
慌てるムロさんが可愛い(笑)矢崎君はスライデングしてくるし。
高良君は緑子さんと何やらお話していた・・・顔小さくてカッコ良かったです。
小栗君は役に入り込んだままのお辞儀がなんとも独特で良い。
しかしスタイルほんと良いですね~。
センターブロック左通路側の方は真近であの奇抜な衣装の小栗君が観られたんですよね~新年早々ラッキーな方だ!(笑)
演出:河原雅彦
出演:小栗旬、橋本さとし、武田真治、吉田鋼太郎、キムラ緑子、石川禅、高良健吾、ムロツヨシ、矢崎広、桜木健一、山内圭哉 他
< あらすじ >
舞台は全体主義の近未来社会。
主人公アレックスはジョージ、ディム、ビート等“ドルーグ”達と共に奇妙な“ナッドサッド語”を使いながら欲望の赴くまま悪行の限りを尽くす。
そして人々をゲームのように襲撃していくアレックスはついに人を殺してしまう。
仲間に裏切られたアレックスは刑務所へ。そこで自由を望むアレックスは刑期を短縮できるという治療方法『ロドビコ療法』の存在を知り、治療の実験台になることを望んだ結果治療を受けることになるが・・・
観劇日:2011年1月8日(土)マチネ@赤坂ACTシアター

言わずと知れたスタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』↓。
![]() | 時計じかけのオレンジ [DVD] (2010/04/21) マルコム・マクドウェル、パトリック・マギー 他 商品詳細を見る |
昔何だか観てはいけない映画という認識をしていた程衝撃的な作品ですが、なんとこれを舞台化すると知った時はどうするんだろう?と思いました。
しかし舞台化は初めてではなく、現地では既に上演されており、日本では初公演と言う事になります。
私の観劇初めがこの『時計じかけのオレンジ』。
新年早々よくこんなエ○グ○バイオレンスな舞台を上演したな~と思いましたが、観に行く私も私だなと(笑)
公式に『疾走するウルトラバイオレンス』とありますが、まさにその通りな舞台でした。
強烈な光と激しい音の洪水、LEDスクリーンの映像を多用する視覚と聴覚に刺激を与える演出。
両サイド鏡ばり(?)な舞台と主人公達の奇抜なファッションで幕開けと共にカオスな世界に引きずり込まれてしまった。
オープニングから異様で無機質な雰囲気が漂う。
まるで異星人が地球に降り立ったかのような役者の登場の仕方がとにかく異様。
別次元の人間の様で居心地が悪くなる。
冒頭のアレックス等ドルーグ達の歌と踊りは明るく軽快でも歌詞が過激でそのギャップが凄まじい。
無邪気さの中にある狂気・・・純粋悪と言うのでしょうか。それが現れていて恐ろしさが際立つ。
そして小栗君演じるアレックスとその仲間たちは顔面白塗りで目には黒いアイライン、真っ白なつなぎと黒い帽子・・・映画そのもののスタイルで登場。これがとても不気味なのです・・・
※以下ネタばれです。
インモラルがモラルな世界で、人間の罪深い潜在的欲望の具現化と言えるアレックスの視点から『善』と『悪』、『人間』というモノを見せられる。
ロドビコ療法を施されたアレックスは暴力や性に対して拒絶反応を起こすようになるが、これは自ら望んで起きる反応ではなく、他者が“除去”し“与えた”姿である。
自ら善と悪の判断が出来てこそ、理性で己の欲望を抑え込むことができてこそ『人間』である。
アレックスは全体主義の社会で生きる「時計じかけのオレンジ」=若さに満ち、見た目は健康健全な若者の様であっても、中身は非人間的で無機質であり、理性も働かず欲望のままに生きる。
そして全体主義国家にいいようにされた(ロドビコ療法をされた後の成れ果て)異質なモノという事かなと思ったのでありました。
またアレックスを見た牧師のセリフと、エンディングの歌と映像に幾度か出てくる「NO CHOICE、NO LIFE」が本作のテーマではないかと。
パンクオペラと言うだけあってバンドの生演奏の迫力が凄い。
役者も歌い踊る!橋本さとしさんと鋼太郎さんの歌声と存在感は圧巻で、やはりお二人が突出していたように思えた。
しかし主演の小栗君も見せるし(←これはビックリ)魅せます。
ロドビコ療法前後のアレックスの演じ分けは上手かったですし、台詞も聞き取りやすかったです。
そしてアレックスの仲間を演じた高良君等若手勢の演技も勢いがありました。
驚くシーンが色々とあり、客席を巻き込むある演出は本当にビックリした。
まさか近くの空いている席に小栗君が来て暴れるとは思わず一瞬何が起きているんだ!?と思いました。
それ以上に驚いたのが休憩時間。
休憩開始後暫く橋本さとしさんと緑子さんがアドリブ混じりでトークしているのもビックリでいたが、まさか小栗君が休憩時間も壇上で絶叫し続けるとは・・・
休憩行けないじゃないか!と(笑)
友人曰く、途中から映像に切り替わってるっぽいとの事でしたが、私はそんなこと疑わずに観ていました(笑)。
あれ実際どうなっていたのでしょう?本当に斬新な演出でした。
映像の多様や歌の入れ方、バンドの生演奏等は少し新感線に似ているなと思ったのですが、既視感ある中にも未体験の演出が仕掛けてあり、全体的にみるとやはり前衛的な舞台だったなと思いました。
ちなみに舞台は原作よりで、ラストも原作と同じだとか。
映画のエンディングの後「まだショーは続くよ」となり、原作通りの成長したアレックスが現れるのですが、映画公開時に色々あったようですね。
原作のエンディングがあるのと無いので全く異なると思います。
若さゆえの行いだから仕方がない、抗えないと言ったような台詞・・・
これそんな台詞で今までの行いを纏めて普通の生活おくっているなんて、かなり恐ろしい・・・。
う~ん・・・新年早々色々な意味で刺激的な舞台でした。
余談ですが、カーテンコールが面白かった。
橋本さとしさんと鋼太郎さんがムロツヨシさんを毎回弄るんです(笑)
ムロさんの帽子を客席に投げたり、ムロさん落とそうとしたり。
慌てるムロさんが可愛い(笑)矢崎君はスライデングしてくるし。
高良君は緑子さんと何やらお話していた・・・顔小さくてカッコ良かったです。
小栗君は役に入り込んだままのお辞儀がなんとも独特で良い。
しかしスタイルほんと良いですね~。
センターブロック左通路側の方は真近であの奇抜な衣装の小栗君が観られたんですよね~新年早々ラッキーな方だ!(笑)
明けましておめでとうございます
なかなか更新することが出来ず年が明けてしまいました^_^;
こんなマイペースなサイトを閲覧、拍手頂き有難うございました。
更新はしておりませんでしたが、その間に映画や舞台はよく観ていました。
『武士の家計簿』は初日舞台挨拶に続き、大ヒット御礼舞台挨拶にも行きました。
大ヒット御礼の方は初日よりチケットが取りやすくて、何と一階席で観ることが出来たのです!
当日は堺さんと森田監督が登壇。森田監督は初日より饒舌で楽しかったです。
堺さんも初日よりリラックスしていたように思えます。
大入り袋も貰えましたし楽しいひと時を過ごすことが出来ました。
舞台はと言いますと、感想書けてませんが大沢たかおさんのミュージカル『ファントム』と堀北真希ちゃん初舞台『ジャンヌダルク』と二カ月連続赤坂ACT通い(笑)
両方素晴らしい舞台でしたので感想書きたいな・・・と思ってます。
『ファントム』は泣きましたね~ラストが悲しくて・・
他にはケラさんの『黴菌』。これも独特の雰囲気がある舞台で面白かったです。
出演者の方が演技派揃いなので個性的なキャラクターを演じ切っていました。
そして観劇納めはパルコシアターの『抜け穴の会議室』。佐々木蔵之介さんと大杉漣さんの演技派二人舞台!
公開2日目にしてクオリティー高い舞台で落ち着いて観ていられました。流石です!
とても素晴らしい観劇納めとなりました。
というわけで書いていない舞台が多いため、何本か纏めて感想を書こうかなと思っています。
昨年の観劇初め『飛龍伝2010』から書けたらなと・・・。
今年の観劇初めは『時計仕掛けのオレンジ』です。
観劇初めにかなり強烈な舞台ですが(笑)キャストが豪華なのと、あの衝撃的な作品をどう舞台化しているのかととても楽しみです。
そういえば、劇団☆新感線の今年の公演情報がシアターガイドと公式HPに出ていましたね。
春 『港町純情オセロ』
秋 『髑髏城の七人』
まさかの髑髏城再演!!!
気になったのが公式HPには両公演“新感線プロデュース公演”となってるんですよね。
しかし本公演と考えていいのでしょうか???
『港町純情オセロ』では橋本じゅんさん完全復活されると言う事で嬉しいです!
チケット取って「お帰りなさい!」と言いたいです。
公演期間が短いのでチケット取りは激戦必至ですね・・・ドキドキです。
今年は楽しみな舞台に、『SP 革命篇』に堤さん出演『プリンセス・トヨトミ』。
堺さん出演『日輪の遺産』声優としては『ブッダ』が公開と楽しみなことばかり。
『SP 革命篇』は特報観て心臓止まるかと思うほどの衝撃を受けたので、楽しみであり不安でもありと複雑です・・・尾形さんがどうなってしまうのか。
・・・と今年もとてもマイペースにやっていくと思いますが、宜しくお願い致します。
こんなマイペースなサイトを閲覧、拍手頂き有難うございました。
更新はしておりませんでしたが、その間に映画や舞台はよく観ていました。
『武士の家計簿』は初日舞台挨拶に続き、大ヒット御礼舞台挨拶にも行きました。
大ヒット御礼の方は初日よりチケットが取りやすくて、何と一階席で観ることが出来たのです!
当日は堺さんと森田監督が登壇。森田監督は初日より饒舌で楽しかったです。
堺さんも初日よりリラックスしていたように思えます。
大入り袋も貰えましたし楽しいひと時を過ごすことが出来ました。
舞台はと言いますと、感想書けてませんが大沢たかおさんのミュージカル『ファントム』と堀北真希ちゃん初舞台『ジャンヌダルク』と二カ月連続赤坂ACT通い(笑)
両方素晴らしい舞台でしたので感想書きたいな・・・と思ってます。
『ファントム』は泣きましたね~ラストが悲しくて・・
他にはケラさんの『黴菌』。これも独特の雰囲気がある舞台で面白かったです。
出演者の方が演技派揃いなので個性的なキャラクターを演じ切っていました。
そして観劇納めはパルコシアターの『抜け穴の会議室』。佐々木蔵之介さんと大杉漣さんの演技派二人舞台!
公開2日目にしてクオリティー高い舞台で落ち着いて観ていられました。流石です!
とても素晴らしい観劇納めとなりました。
というわけで書いていない舞台が多いため、何本か纏めて感想を書こうかなと思っています。
昨年の観劇初め『飛龍伝2010』から書けたらなと・・・。
今年の観劇初めは『時計仕掛けのオレンジ』です。
観劇初めにかなり強烈な舞台ですが(笑)キャストが豪華なのと、あの衝撃的な作品をどう舞台化しているのかととても楽しみです。
そういえば、劇団☆新感線の今年の公演情報がシアターガイドと公式HPに出ていましたね。
春 『港町純情オセロ』
秋 『髑髏城の七人』
まさかの髑髏城再演!!!
気になったのが公式HPには両公演“新感線プロデュース公演”となってるんですよね。
しかし本公演と考えていいのでしょうか???
『港町純情オセロ』では橋本じゅんさん完全復活されると言う事で嬉しいです!
チケット取って「お帰りなさい!」と言いたいです。
公演期間が短いのでチケット取りは激戦必至ですね・・・ドキドキです。
今年は楽しみな舞台に、『SP 革命篇』に堤さん出演『プリンセス・トヨトミ』。
堺さん出演『日輪の遺産』声優としては『ブッダ』が公開と楽しみなことばかり。
『SP 革命篇』は特報観て心臓止まるかと思うほどの衝撃を受けたので、楽しみであり不安でもありと複雑です・・・尾形さんがどうなってしまうのか。
・・・と今年もとてもマイペースにやっていくと思いますが、宜しくお願い致します。
『武士の家計簿』 心に響くは算盤の音
監督:森田芳光
原作:磯田道史「武士の家計簿」
出演:堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、中村雅俊、西村雅彦、伊藤祐輝、大八木凱斗、藤井美菜、野間口徹、草笛光子 他
制作年:2010年 日本
鑑賞日:2010年12月4日@丸の内ピカデリー 初日舞台挨拶つき初回
2010年12月15日@丸の内ピカデリー 大ヒット御礼舞台挨拶
<ストーリー>
時は江戸時代。御算用者(会計処理の専門家)として、代々加賀藩の財政に携わる猪山家。八代目の直之は、天性の数学的感覚を持っていた。彼はやがて、お駒という女性と結婚し、昇進も果たす。だが身分が高くなるにつれ出費も増え、彼は倹約生活を実行することに。
・武士の家計簿@ぴあ映画生活より引用
★初日舞台挨拶レポは追記に書いてあります。
歴史教養書としては異例のストセラーとなった新書を映画化。
森田監督の時代劇と言えば織田さん主演で撮った『椿三十郎』がありますが、あちらは殺陣ありの誰もがイメージするような時代劇。しかし本作は時代劇に付き物の殺陣はありません。主役は武士でも加賀藩御算用・・「そろばん侍」なのですから。
著者の磯田氏は大学のサブテキストのつもりで書いていたそうですが、それがまさかのベストセラー。しかも映画化してしまうとは。
猪山家は代々加賀藩の財政に関わってきた。主人公の直之は8代目で父・信之も御算用。
数字に関して天才的な感覚を持っていた直之は他の者からは「そろばん馬鹿」と言われる程に、毎日毎日帳尻合わせを誰よりも熱心に行っていた。
パチン、パチン。
そろばんを弾く音が心地よく聞こえればと舞台挨拶で堺さんが言っていたように、
何故だかこの音が心地よく、気持ちが透くような気がするから不思議である。
そろばんの音で始まり、そろばんで終わる作りも何だか粋。
直之のそろばんを弾く音は彼自身の性格を表しているようで規則正しく誠実な音がする。
あまりの没頭ぶりに周囲からは少し奇異の目で見られることもある直之にある日商家の母を持つお駒との縁談の話が来る。
お駒と直之の初体面のシーンは二人の純粋で真面目な性格が出ていてとても爽やかで好きなシーン。
その後のお駒が猪山家に嫁いだ日に二人が交わす会話も観ていて自然と笑顔になるような温かさがありました。
真面目で仕事熱心な性格から直之はとある事件に巻き込まれることになるのですが、
このエピソードも当時の事がよく分かると共に、直之が現代のサラリーマンに見えるのです。
武士だって組織社会に生きる公務員みたいなもの(特にこの御算用はそれが強い気がしました。)。しかし直之の信念貫く姿は現代人には失われたモノの様に思えました。
穏やかに過ごしてきた猪山家、しかし多額の借金が判明。
出世や武士の体面を保つのに当時はかなりの額を使っていたようで、それが武士は貧しいと言われる所以だったのかと納得。
家臣に払う給料等もある訳ですから確かに大変・・・
この危機を脱するためにこの日から直之指示のもと、一家は質素倹約生活へ。
体面重んじる武士にとっては“恥さらし”という事になる。
ただでさえ猪山家には剣ではなく、“武器”はそろばん・・
しかし「大切な物は体面か?」と直之はお駒に問う。本作の魅力はここにある。
猪山家の根底にある強い絆と温かい心、深い愛情。これらが根底にあるからこそ例え経済的に苦しくても決して揺らぐことはない。
貧しい生活だが知恵を振り絞り、助け合い、工夫を凝らして日々を明るく過ごす姿は「そろばん侍」としての武士道とも言える。
直之は剣術が優れているわけでもない、剣を振り戦う武士の威圧感等もない、しかし彼ら武士と同じであり、心の強さでは負けない。そんな武士なのだと思った。
また、猪山家も素晴らしい家族である。
食卓を家族で囲い、息子は父を尊敬し、父は息子を甘やかすことなく厳しく指導する。
猪山家はまさに理想の家族の形なんですよね。
古き良き日本の家族。だからなのか観ていて懐かしい、そして知らぬ間に猪山家の一員になっている気さえしてしまう。
とても魅力的な家族でした。
この家族が本当の家族に見えたのはやはりキャスティングの妙でしょう。
どのキャストも嵌っているんですよね。
特に堺さん、猪山直之は堺さんしか演じることは出来ないと思います。
直之の誠実で穏やかなあの性格は堺さんそのものの様な・・・
時折可愛らしい反応をしたり、お駒との会話で少し照れる表情や、息子・直吉をしかる時の迫力ある声等、流石「笑顔で喜怒哀楽を表わす男」と言われるだけあるなぁと改めてその魅力を感じました。
仲間由紀恵さんもとてもお駒という女性にぴったりなキャスティングだったと思います。
お駒は芯がしっかりとした強い女性。愛情も深く、そして可愛らしい。
そんな仲間さんと、堺さんはふんわりとした雰囲気が似ているからという事も相俟って、自然でとても良い夫婦でした。
本作は加賀藩の御算用・猪山直之とその家族の生涯を激動の時代を背景に描いた作であり、派手さはなく、淡々と話が進みます。
しかしその淡々とした作りがじわじわと心を温めてくれる様な気がします。
現代日本に失われた物が沢山詰まった笑いあり、涙ありの温かい作品でした。
追記は初日舞台挨拶レポです!
↓↓↓
原作:磯田道史「武士の家計簿」
出演:堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、中村雅俊、西村雅彦、伊藤祐輝、大八木凱斗、藤井美菜、野間口徹、草笛光子 他
制作年:2010年 日本
鑑賞日:2010年12月4日@丸の内ピカデリー 初日舞台挨拶つき初回
2010年12月15日@丸の内ピカデリー 大ヒット御礼舞台挨拶
<ストーリー>
時は江戸時代。御算用者(会計処理の専門家)として、代々加賀藩の財政に携わる猪山家。八代目の直之は、天性の数学的感覚を持っていた。彼はやがて、お駒という女性と結婚し、昇進も果たす。だが身分が高くなるにつれ出費も増え、彼は倹約生活を実行することに。
・武士の家計簿@ぴあ映画生活より引用
★初日舞台挨拶レポは追記に書いてあります。
歴史教養書としては異例のストセラーとなった新書を映画化。
森田監督の時代劇と言えば織田さん主演で撮った『椿三十郎』がありますが、あちらは殺陣ありの誰もがイメージするような時代劇。しかし本作は時代劇に付き物の殺陣はありません。主役は武士でも加賀藩御算用・・「そろばん侍」なのですから。
著者の磯田氏は大学のサブテキストのつもりで書いていたそうですが、それがまさかのベストセラー。しかも映画化してしまうとは。
猪山家は代々加賀藩の財政に関わってきた。主人公の直之は8代目で父・信之も御算用。
数字に関して天才的な感覚を持っていた直之は他の者からは「そろばん馬鹿」と言われる程に、毎日毎日帳尻合わせを誰よりも熱心に行っていた。
パチン、パチン。
そろばんを弾く音が心地よく聞こえればと舞台挨拶で堺さんが言っていたように、
何故だかこの音が心地よく、気持ちが透くような気がするから不思議である。
そろばんの音で始まり、そろばんで終わる作りも何だか粋。
直之のそろばんを弾く音は彼自身の性格を表しているようで規則正しく誠実な音がする。
あまりの没頭ぶりに周囲からは少し奇異の目で見られることもある直之にある日商家の母を持つお駒との縁談の話が来る。
お駒と直之の初体面のシーンは二人の純粋で真面目な性格が出ていてとても爽やかで好きなシーン。
その後のお駒が猪山家に嫁いだ日に二人が交わす会話も観ていて自然と笑顔になるような温かさがありました。
真面目で仕事熱心な性格から直之はとある事件に巻き込まれることになるのですが、
このエピソードも当時の事がよく分かると共に、直之が現代のサラリーマンに見えるのです。
武士だって組織社会に生きる公務員みたいなもの(特にこの御算用はそれが強い気がしました。)。しかし直之の信念貫く姿は現代人には失われたモノの様に思えました。
穏やかに過ごしてきた猪山家、しかし多額の借金が判明。
出世や武士の体面を保つのに当時はかなりの額を使っていたようで、それが武士は貧しいと言われる所以だったのかと納得。
家臣に払う給料等もある訳ですから確かに大変・・・
この危機を脱するためにこの日から直之指示のもと、一家は質素倹約生活へ。
体面重んじる武士にとっては“恥さらし”という事になる。
ただでさえ猪山家には剣ではなく、“武器”はそろばん・・
しかし「大切な物は体面か?」と直之はお駒に問う。本作の魅力はここにある。
猪山家の根底にある強い絆と温かい心、深い愛情。これらが根底にあるからこそ例え経済的に苦しくても決して揺らぐことはない。
貧しい生活だが知恵を振り絞り、助け合い、工夫を凝らして日々を明るく過ごす姿は「そろばん侍」としての武士道とも言える。
直之は剣術が優れているわけでもない、剣を振り戦う武士の威圧感等もない、しかし彼ら武士と同じであり、心の強さでは負けない。そんな武士なのだと思った。
また、猪山家も素晴らしい家族である。
食卓を家族で囲い、息子は父を尊敬し、父は息子を甘やかすことなく厳しく指導する。
猪山家はまさに理想の家族の形なんですよね。
古き良き日本の家族。だからなのか観ていて懐かしい、そして知らぬ間に猪山家の一員になっている気さえしてしまう。
とても魅力的な家族でした。
この家族が本当の家族に見えたのはやはりキャスティングの妙でしょう。
どのキャストも嵌っているんですよね。
特に堺さん、猪山直之は堺さんしか演じることは出来ないと思います。
直之の誠実で穏やかなあの性格は堺さんそのものの様な・・・
時折可愛らしい反応をしたり、お駒との会話で少し照れる表情や、息子・直吉をしかる時の迫力ある声等、流石「笑顔で喜怒哀楽を表わす男」と言われるだけあるなぁと改めてその魅力を感じました。
仲間由紀恵さんもとてもお駒という女性にぴったりなキャスティングだったと思います。
お駒は芯がしっかりとした強い女性。愛情も深く、そして可愛らしい。
そんな仲間さんと、堺さんはふんわりとした雰囲気が似ているからという事も相俟って、自然でとても良い夫婦でした。
本作は加賀藩の御算用・猪山直之とその家族の生涯を激動の時代を背景に描いた作であり、派手さはなく、淡々と話が進みます。
しかしその淡々とした作りがじわじわと心を温めてくれる様な気がします。
現代日本に失われた物が沢山詰まった笑いあり、涙ありの温かい作品でした。
追記は初日舞台挨拶レポです!
↓↓↓
観劇 『K2』
作:パトリック・メイヤーズ
演出:千葉哲也
出演:堤真一 (ハロルド)、 草なぎ剛 (テイラー)
< あらすじ >
世界第二位の高峰「K2」登頂に成功した物理学者のハロルドと地方検事補のテイラーは
下山途中の8,100メートル付近で遭難してしまう。
しかもハロルドは足を骨折してしまい、身動きが取れない。
氷点下40度、十分な装備もなく、酸素も薄いという極限状態に置かれた二人。
お互いの人生を語り振り返るうちに、迫りくる死を意識しながらも懸命に下山を試みるが・・・
観劇日:2010年11月25日 ソワレ @世田谷パブリックシアター
極限状態に置かれたのは何もハロルドとテイラーだけではなく、この舞台を観たい方全てだったのではないだろうか・・・それ程この舞台のチケット争奪戦は凄かった。
今回はもしかしたら取れないかもと思っていたら幸運にもチケットを取ることが出来ました。
なので、この舞台はかなりの特別感がありました。
堤さんの髭は最初見た時驚きましたが、役作りだったんですよね。
今回は(というか“も”)ネタばれで感想を書いていこうと思います。
※以下ネタばれですのでご注意下さい。
『At home at the ZOO』と同様、今回の演出も千葉哲也さん。
『At~』も舞台装置を始め照明等、各演出が心情を投影している印象を受けたのですが、
今回の演出も良いのです。
開演前の場内には吹雪の音が流れており、もうそこはK2の世界。
そして幕が上がると同時に客席へ白い霧(というか雪)が流れ込み、まるで雪山に迷い込んだかのような錯覚を覚える。
そして視界が晴れると目の前には巨大な氷壁が出現する。
氷壁の向こうには雪山が見え(これがまた見事な遠近感)、劇場を一瞬にして雪山に変えてしまった。
この演出にまず心を鷲掴みされました。
物凄く感動したのです・・・白い霧が客席を徐々に包みこんでいき、氷壁が出現する様が幻想的で。
霧が晴れると氷壁中央にある狭い岩棚に黄色いシートを被り、身を寄せ合っている二人が現れる。
何とか山の途中にあった岩棚で一晩やり過ごしたテイラーとハロルド。
テイラーは目覚めると生きていたという事実を喜ぶ。
一方のハロルドは意識が朦朧としているのかテイラーの問いかけに対する反応が鈍い。
ここで二人は全く違うタイプの人間なのだなということが伝わります。
というか・・先に『ハロルドが足を骨折し~』という事を知っていたので「え、もう既に危ない状態なの!?」とかなり冷や冷やしたので、必死にハロルドを起こそうとするテイラーと同じ気持ちになりました、
下山の為の装備点検を始めるテイラーは未だ希望に満ちていて、とても生き生きとしているように思える。そんなテイラーと違ってハロルドはテイラーと行う準備点検もどこか身が入っていなよう。
下山出来る可能性がほぼ無いことを既に悟っているようにも思えるこの態度。
そんなハロルドにテイラーは「自分たちがこの岩棚で生き延びたことは普通に考えてあり得ない。だから自分達には未だ運があるんだ」と鼓舞する。
このテイラーの言葉に感化されたのか、ハロルドはテイラーと共に下山への希望にかける。
そして上部に残された下山に必要な一本のザイルを取りに戻ることを決意する。
必ず二人で降りるために...。
氷壁を登っていくテイラーはチャレンジする度にハロルドに「何か話してくれ」と言う。
テイラーが登り、再び岩棚へ戻ってくるまでハロルドは自身が学んだ物理学や影響を受けたアインシュタイン、宗教、そして学生時代の自分や怪しげな怪物話などをする。
ハロルドという人は物理学者というからお堅いキャラクターなのかなと思いきや、実はそうではないんですよね。確かに理屈っぽいのですが、結構茶目っけ(ん・・死語?笑)がある人。
劇中何度か下系のセリフが出てきますが何でしょう・・何故か堤さんが言うとそういったセリフもすっと入ってくるのですが、草なぎ君が言うと何だか違和感を感じてしまいました。いや、別に堤さんがよく下ネタを言っているとかではなくて(野望篇のインタビューで岡田君が言っていたっけ(笑))(^^ゞ
一方のテイラーは最初の明るく前向きな姿から草なぎ剛=良い人役を演じるイメージがあったので、今回もそうなのかと思いきや、実は違う。
それはザイルを取るために行った際に起きた雪崩から一変する。
状況も、精神状態も何もかも。
この雪崩、「雪崩が起きるかもな」と二人が言っていた時はどうするのだろうと思っていましたが、本当に雪崩起きました・・・世田谷パブリックシアターで雪崩起こさせたんですよ。
氷壁のセットだけでも凄いと思っていたのに雪崩までやるとは本当に本公演の演出はスケールが大きい。
二人に闇が覆いかぶさりそして一気に雪の塊が落っこちてくるのです。
その雪(発砲スチロールと紙でできているのかな?)の量が多いので、客席まで迫ってくるという迫力。
前列のお客さんは雪まみれになっていました。
この雪崩でテイラーの平常心も崩れ落ちたのです。
あたり一面真っ白な雪景色、氷点下40度の閉塞された、まるで孤島に居るかのようなこの状況、突然死への恐怖に直面し狂気がテイラーに宿る。
それを冷静に落ち着かせようとするハロルド。
やがてテイラーは自身の事を語り始める。
地方検事補である自分の仕事について、女性関係について。
ここで語られる話は当初の陽気な姿とは真逆の話である。
自身を社会的害悪から守るかの如く他人を攻撃する生き方をし、自分はハロルドの様な妻や子が居る温かい家庭はない、必要ないと強く言うのである。
しかしこの生き方は恐らく本心とは違うような気がする。
テイラーは人生の孤独や焦燥感から逃げているように思える。
そんなテイラーが「俺が好きなあんたが」と言うのだから、内心ハロルドの様な人生にあこがれると共に、ハロルドに自身の心の隙間を埋める「兄」や「父」を見、求めていたのではないかと思った。
“感情の暴露”、それは互いに信頼しあった者同士でしか為せないことである。
その強い信頼関係からハロルドはある決断をするのです。
自分がもうテイラーと一緒に下山する力が残されていないと悟ったハロルドは、テイラーに自分を残し下山するよう説得する。しかしテイラーは拒否をする。
もしハロルドを残して下山したとしてもその後の人生で後悔し続け、毎日罪悪感に苛まれる事になる・・・。
ハロルドの気持ちもテイラーの気持ちもどちらも分かるし、どちらも正論。
テイラーにとってハロルドはとても大切な人であり、「ずっと友達は欲しかった。そして出来た友達はお前だ」と言うようなセリフから本当に特別な存在になっていたんでしょう。
そんなハロルドを置いて自分だけ助かる事なんて出来ない、したくないというテイラーの気持ちに同調してこのシーンから私の涙が出始める訳です・・・・
此の時の草なぎ君の演技が響いたんですよね。
前半の怒鳴る演技は何だか浮いているような(すいません;)気がしたのですが、ここのシーンはテイラーの真実の姿=純粋さが現れていたからか、草なぎ君ともマッチしていたように思えたのです。
先述のとおり“草なぎ剛=良い人”のイメージが強いからかもしれませんね。
ハロルドを置いて一人下山するなら一緒にここで一生を終えると言うテイラーにハロルドは言う、シンディー(妻)に触れたい、エリック(息子)のこれからの成長を見たい・・・。
死を予期したハロルドは懇願する「俺の代わりに」と言う様にお前が下りれば俺の願いは叶うのだ、だから最後の願いを聞いてくれと。
ハロルドの願いを聞き入れたテイラーは下山することを決意する。
テイラーが下山している事を確認しつつ、ハロルドは自身の人生を改めて振り返る。
何て自分は自分勝手に生きていたのだと悔やみ、妻と息子への愛を叫ぶ。
「人生とは受け入れることである」
ハロルドがテイラーに話したこの言葉。
前半と終盤の二人の変化はまさにこのセリフが掛っていて、終盤の二人の姿は逃げずに戦い、「全てを受け入れた」姿なのだなと思いました。
ハロルドは下山していくテイラーを確認しながら白い一匹の目が見えない狐の話をする。
誰に聞かせるでもなく、自分の為に話すのです。
この話は宗教的で、日本の神話にも似たような話があったような・・・と思ったお話なのですが、
この狐に一人岩棚に残され、死が迫る自分を重ねているんですよね。
そして語っているうちにハロルドは気付く。目が見えない狐が何故じっと死を待てたのか
・・・それは次に生れる時は目があることを知っていたからだと。
これはテイラーが下山することで再びハロルドに命が宿る。
テイラーが生きている事がハロルドが生きた証であり、
テイラーは山での出来事を、父の雄姿をエリックに伝えることが出来る。
妻シンディーにもハロルドの愛を伝えることが出来る。
二人は永遠に“見えないザイル”で繋がっているのだ。
そして彼らの記憶の中にハロルドは生き続けると思うから・・・
自分は新たな“姿”で生き続ける。
来世でまたシンディーとエリックに会える(ハロルドは信仰心が強いと思うので)と思ったというか悟ったのでしょう。
最後のハロルドの表情はとても穏やかで、幸せそうにも見えました。
何だか『クライマーズハイ』の安西のセリフ「下りるために登るんさ」が浮かんだんですよね、このラスト。
ハロルドもテイラーも下りたんですよね・・・心に抱える色々なしがらみや、不安等から。
そして新たな未来へと歩み始めた・・。
このラストに辿りつくまでの照明の使い方が上手いなと思ったのが、迫りくる死の恐怖と闘うハロルドをじょじょに闇が覆うあの演出。
空が段々暗闇と化していくんですよね。
また、ラストなんてハロルドにスポットが当たり、堤さんの素晴らしい表情と氷壁の美しさが際立ち、まるで一枚の絵のようでした。
この舞台、改めて堤さんの演技の素晴らしさを実感した舞台でした。
堤さんは足を骨折しているという役なので、身動きが出来ず、最初から最後まで座りっぱなし。なので語調の変化や表情でハロルドの心情の変化を表現しなければならない。
制約された中での表現というのはとても難しく、大変なのではと思いますが、それをやってしまう・・・しかも自然に。表情に、台詞にハロルドの魂を乗せた演技をされるのです。
なのでじんわりとそれこそ雪解けの様な感動と悲しみが染みわたる。自然に涙が出る演技・・・
また私を惚れさせるのかと(笑)
草なぎ君は堤さんと違い動きが多く、氷壁の上り下りはとても大変だったと思います。
しかもセリフを話しながらですからね。
神経質で感情の起伏が激しいテイラーを力いっぱい演じていたように思いました。
終盤の純粋さが出た瞬間は本当に良かったです。
カーテンコールは3回、スタンディングオベーション!
私も「座って拍手なんて失礼だ」と思い直ぐに席を立ちおもいっきり拍手をしました。
パンフレットで「ドキュメンタリーの様に見える芝居になればいい」と千葉さんがコメントしておりましたが、まさにドキュメンタリーの様で、ずっと二人を見守っている感覚に成りました。
これは体感しないと味わえない感動ですね・・・だから舞台は面白い。
何だか大きなモノを貰った舞台でありました。
演出:千葉哲也
出演:堤真一 (ハロルド)、 草なぎ剛 (テイラー)
< あらすじ >
世界第二位の高峰「K2」登頂に成功した物理学者のハロルドと地方検事補のテイラーは
下山途中の8,100メートル付近で遭難してしまう。
しかもハロルドは足を骨折してしまい、身動きが取れない。
氷点下40度、十分な装備もなく、酸素も薄いという極限状態に置かれた二人。
お互いの人生を語り振り返るうちに、迫りくる死を意識しながらも懸命に下山を試みるが・・・
観劇日:2010年11月25日 ソワレ @世田谷パブリックシアター
極限状態に置かれたのは何もハロルドとテイラーだけではなく、この舞台を観たい方全てだったのではないだろうか・・・それ程この舞台のチケット争奪戦は凄かった。
今回はもしかしたら取れないかもと思っていたら幸運にもチケットを取ることが出来ました。
なので、この舞台はかなりの特別感がありました。
堤さんの髭は最初見た時驚きましたが、役作りだったんですよね。
今回は(というか“も”)ネタばれで感想を書いていこうと思います。
※以下ネタばれですのでご注意下さい。
『At home at the ZOO』と同様、今回の演出も千葉哲也さん。
『At~』も舞台装置を始め照明等、各演出が心情を投影している印象を受けたのですが、
今回の演出も良いのです。
開演前の場内には吹雪の音が流れており、もうそこはK2の世界。
そして幕が上がると同時に客席へ白い霧(というか雪)が流れ込み、まるで雪山に迷い込んだかのような錯覚を覚える。
そして視界が晴れると目の前には巨大な氷壁が出現する。
氷壁の向こうには雪山が見え(これがまた見事な遠近感)、劇場を一瞬にして雪山に変えてしまった。
この演出にまず心を鷲掴みされました。
物凄く感動したのです・・・白い霧が客席を徐々に包みこんでいき、氷壁が出現する様が幻想的で。
霧が晴れると氷壁中央にある狭い岩棚に黄色いシートを被り、身を寄せ合っている二人が現れる。
何とか山の途中にあった岩棚で一晩やり過ごしたテイラーとハロルド。
テイラーは目覚めると生きていたという事実を喜ぶ。
一方のハロルドは意識が朦朧としているのかテイラーの問いかけに対する反応が鈍い。
ここで二人は全く違うタイプの人間なのだなということが伝わります。
というか・・先に『ハロルドが足を骨折し~』という事を知っていたので「え、もう既に危ない状態なの!?」とかなり冷や冷やしたので、必死にハロルドを起こそうとするテイラーと同じ気持ちになりました、
下山の為の装備点検を始めるテイラーは未だ希望に満ちていて、とても生き生きとしているように思える。そんなテイラーと違ってハロルドはテイラーと行う準備点検もどこか身が入っていなよう。
下山出来る可能性がほぼ無いことを既に悟っているようにも思えるこの態度。
そんなハロルドにテイラーは「自分たちがこの岩棚で生き延びたことは普通に考えてあり得ない。だから自分達には未だ運があるんだ」と鼓舞する。
このテイラーの言葉に感化されたのか、ハロルドはテイラーと共に下山への希望にかける。
そして上部に残された下山に必要な一本のザイルを取りに戻ることを決意する。
必ず二人で降りるために...。
氷壁を登っていくテイラーはチャレンジする度にハロルドに「何か話してくれ」と言う。
テイラーが登り、再び岩棚へ戻ってくるまでハロルドは自身が学んだ物理学や影響を受けたアインシュタイン、宗教、そして学生時代の自分や怪しげな怪物話などをする。
ハロルドという人は物理学者というからお堅いキャラクターなのかなと思いきや、実はそうではないんですよね。確かに理屈っぽいのですが、結構茶目っけ(ん・・死語?笑)がある人。
劇中何度か下系のセリフが出てきますが何でしょう・・何故か堤さんが言うとそういったセリフもすっと入ってくるのですが、草なぎ君が言うと何だか違和感を感じてしまいました。いや、別に堤さんがよく下ネタを言っているとかではなくて(野望篇のインタビューで岡田君が言っていたっけ(笑))(^^ゞ
一方のテイラーは最初の明るく前向きな姿から草なぎ剛=良い人役を演じるイメージがあったので、今回もそうなのかと思いきや、実は違う。
それはザイルを取るために行った際に起きた雪崩から一変する。
状況も、精神状態も何もかも。
この雪崩、「雪崩が起きるかもな」と二人が言っていた時はどうするのだろうと思っていましたが、本当に雪崩起きました・・・世田谷パブリックシアターで雪崩起こさせたんですよ。
氷壁のセットだけでも凄いと思っていたのに雪崩までやるとは本当に本公演の演出はスケールが大きい。
二人に闇が覆いかぶさりそして一気に雪の塊が落っこちてくるのです。
その雪(発砲スチロールと紙でできているのかな?)の量が多いので、客席まで迫ってくるという迫力。
前列のお客さんは雪まみれになっていました。
この雪崩でテイラーの平常心も崩れ落ちたのです。
あたり一面真っ白な雪景色、氷点下40度の閉塞された、まるで孤島に居るかのようなこの状況、突然死への恐怖に直面し狂気がテイラーに宿る。
それを冷静に落ち着かせようとするハロルド。
やがてテイラーは自身の事を語り始める。
地方検事補である自分の仕事について、女性関係について。
ここで語られる話は当初の陽気な姿とは真逆の話である。
自身を社会的害悪から守るかの如く他人を攻撃する生き方をし、自分はハロルドの様な妻や子が居る温かい家庭はない、必要ないと強く言うのである。
しかしこの生き方は恐らく本心とは違うような気がする。
テイラーは人生の孤独や焦燥感から逃げているように思える。
そんなテイラーが「俺が好きなあんたが」と言うのだから、内心ハロルドの様な人生にあこがれると共に、ハロルドに自身の心の隙間を埋める「兄」や「父」を見、求めていたのではないかと思った。
“感情の暴露”、それは互いに信頼しあった者同士でしか為せないことである。
その強い信頼関係からハロルドはある決断をするのです。
自分がもうテイラーと一緒に下山する力が残されていないと悟ったハロルドは、テイラーに自分を残し下山するよう説得する。しかしテイラーは拒否をする。
もしハロルドを残して下山したとしてもその後の人生で後悔し続け、毎日罪悪感に苛まれる事になる・・・。
ハロルドの気持ちもテイラーの気持ちもどちらも分かるし、どちらも正論。
テイラーにとってハロルドはとても大切な人であり、「ずっと友達は欲しかった。そして出来た友達はお前だ」と言うようなセリフから本当に特別な存在になっていたんでしょう。
そんなハロルドを置いて自分だけ助かる事なんて出来ない、したくないというテイラーの気持ちに同調してこのシーンから私の涙が出始める訳です・・・・
此の時の草なぎ君の演技が響いたんですよね。
前半の怒鳴る演技は何だか浮いているような(すいません;)気がしたのですが、ここのシーンはテイラーの真実の姿=純粋さが現れていたからか、草なぎ君ともマッチしていたように思えたのです。
先述のとおり“草なぎ剛=良い人”のイメージが強いからかもしれませんね。
ハロルドを置いて一人下山するなら一緒にここで一生を終えると言うテイラーにハロルドは言う、シンディー(妻)に触れたい、エリック(息子)のこれからの成長を見たい・・・。
死を予期したハロルドは懇願する「俺の代わりに」と言う様にお前が下りれば俺の願いは叶うのだ、だから最後の願いを聞いてくれと。
ハロルドの願いを聞き入れたテイラーは下山することを決意する。
テイラーが下山している事を確認しつつ、ハロルドは自身の人生を改めて振り返る。
何て自分は自分勝手に生きていたのだと悔やみ、妻と息子への愛を叫ぶ。
「人生とは受け入れることである」
ハロルドがテイラーに話したこの言葉。
前半と終盤の二人の変化はまさにこのセリフが掛っていて、終盤の二人の姿は逃げずに戦い、「全てを受け入れた」姿なのだなと思いました。
ハロルドは下山していくテイラーを確認しながら白い一匹の目が見えない狐の話をする。
誰に聞かせるでもなく、自分の為に話すのです。
この話は宗教的で、日本の神話にも似たような話があったような・・・と思ったお話なのですが、
この狐に一人岩棚に残され、死が迫る自分を重ねているんですよね。
そして語っているうちにハロルドは気付く。目が見えない狐が何故じっと死を待てたのか
・・・それは次に生れる時は目があることを知っていたからだと。
これはテイラーが下山することで再びハロルドに命が宿る。
テイラーが生きている事がハロルドが生きた証であり、
テイラーは山での出来事を、父の雄姿をエリックに伝えることが出来る。
妻シンディーにもハロルドの愛を伝えることが出来る。
二人は永遠に“見えないザイル”で繋がっているのだ。
そして彼らの記憶の中にハロルドは生き続けると思うから・・・
自分は新たな“姿”で生き続ける。
来世でまたシンディーとエリックに会える(ハロルドは信仰心が強いと思うので)と思ったというか悟ったのでしょう。
最後のハロルドの表情はとても穏やかで、幸せそうにも見えました。
何だか『クライマーズハイ』の安西のセリフ「下りるために登るんさ」が浮かんだんですよね、このラスト。
ハロルドもテイラーも下りたんですよね・・・心に抱える色々なしがらみや、不安等から。
そして新たな未来へと歩み始めた・・。
このラストに辿りつくまでの照明の使い方が上手いなと思ったのが、迫りくる死の恐怖と闘うハロルドをじょじょに闇が覆うあの演出。
空が段々暗闇と化していくんですよね。
また、ラストなんてハロルドにスポットが当たり、堤さんの素晴らしい表情と氷壁の美しさが際立ち、まるで一枚の絵のようでした。
この舞台、改めて堤さんの演技の素晴らしさを実感した舞台でした。
堤さんは足を骨折しているという役なので、身動きが出来ず、最初から最後まで座りっぱなし。なので語調の変化や表情でハロルドの心情の変化を表現しなければならない。
制約された中での表現というのはとても難しく、大変なのではと思いますが、それをやってしまう・・・しかも自然に。表情に、台詞にハロルドの魂を乗せた演技をされるのです。
なのでじんわりとそれこそ雪解けの様な感動と悲しみが染みわたる。自然に涙が出る演技・・・
また私を惚れさせるのかと(笑)
草なぎ君は堤さんと違い動きが多く、氷壁の上り下りはとても大変だったと思います。
しかもセリフを話しながらですからね。
神経質で感情の起伏が激しいテイラーを力いっぱい演じていたように思いました。
終盤の純粋さが出た瞬間は本当に良かったです。
カーテンコールは3回、スタンディングオベーション!
私も「座って拍手なんて失礼だ」と思い直ぐに席を立ちおもいっきり拍手をしました。
パンフレットで「ドキュメンタリーの様に見える芝居になればいい」と千葉さんがコメントしておりましたが、まさにドキュメンタリーの様で、ずっと二人を見守っている感覚に成りました。
これは体感しないと味わえない感動ですね・・・だから舞台は面白い。
何だか大きなモノを貰った舞台でありました。

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