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『武士の家計簿』 心に響くは算盤の音

監督:森田芳光
原作:磯田道史「武士の家計簿」
出演:堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、中村雅俊、西村雅彦、伊藤祐輝、大八木凱斗、藤井美菜、野間口徹、草笛光子 他

制作年:2010年 日本

鑑賞日:2010年12月4日@丸の内ピカデリー 初日舞台挨拶つき初回
2010年12月15日@丸の内ピカデリー 大ヒット御礼舞台挨拶


<ストーリー>
時は江戸時代。御算用者(会計処理の専門家)として、代々加賀藩の財政に携わる猪山家。八代目の直之は、天性の数学的感覚を持っていた。彼はやがて、お駒という女性と結婚し、昇進も果たす。だが身分が高くなるにつれ出費も増え、彼は倹約生活を実行することに。


武士の家計簿@ぴあ映画生活より引用








★初日舞台挨拶レポは追記に書いてあります。




歴史教養書としては異例のストセラーとなった新書を映画化。
森田監督の時代劇と言えば織田さん主演で撮った『椿三十郎』がありますが、あちらは殺陣ありの誰もがイメージするような時代劇。しかし本作は時代劇に付き物の殺陣はありません。主役は武士でも加賀藩御算用・・「そろばん侍」なのですから。

著者の磯田氏は大学のサブテキストのつもりで書いていたそうですが、それがまさかのベストセラー。しかも映画化してしまうとは。



猪山家は代々加賀藩の財政に関わってきた。主人公の直之は8代目で父・信之も御算用。
数字に関して天才的な感覚を持っていた直之は他の者からは「そろばん馬鹿」と言われる程に、毎日毎日帳尻合わせを誰よりも熱心に行っていた。


パチン、パチン。



そろばんを弾く音が心地よく聞こえればと舞台挨拶で堺さんが言っていたように、
何故だかこの音が心地よく、気持ちが透くような気がするから不思議である。
そろばんの音で始まり、そろばんで終わる作りも何だか粋。



直之のそろばんを弾く音は彼自身の性格を表しているようで規則正しく誠実な音がする。



あまりの没頭ぶりに周囲からは少し奇異の目で見られることもある直之にある日商家の母を持つお駒との縁談の話が来る。



お駒と直之の初体面のシーンは二人の純粋で真面目な性格が出ていてとても爽やかで好きなシーン。
その後のお駒が猪山家に嫁いだ日に二人が交わす会話も観ていて自然と笑顔になるような温かさがありました。



真面目で仕事熱心な性格から直之はとある事件に巻き込まれることになるのですが、
このエピソードも当時の事がよく分かると共に、直之が現代のサラリーマンに見えるのです。
武士だって組織社会に生きる公務員みたいなもの(特にこの御算用はそれが強い気がしました。)。しかし直之の信念貫く姿は現代人には失われたモノの様に思えました。




穏やかに過ごしてきた猪山家、しかし多額の借金が判明。
出世や武士の体面を保つのに当時はかなりの額を使っていたようで、それが武士は貧しいと言われる所以だったのかと納得。


家臣に払う給料等もある訳ですから確かに大変・・・
この危機を脱するためにこの日から直之指示のもと、一家は質素倹約生活へ。



体面重んじる武士にとっては“恥さらし”という事になる。
ただでさえ猪山家には剣ではなく、“武器”はそろばん・・
しかし「大切な物は体面か?」と直之はお駒に問う。本作の魅力はここにある。




猪山家の根底にある強い絆と温かい心、深い愛情。これらが根底にあるからこそ例え経済的に苦しくても決して揺らぐことはない。


貧しい生活だが知恵を振り絞り、助け合い、工夫を凝らして日々を明るく過ごす姿は「そろばん侍」としての武士道とも言える。

直之は剣術が優れているわけでもない、剣を振り戦う武士の威圧感等もない、しかし彼ら武士と同じであり、心の強さでは負けない。そんな武士なのだと思った。


また、猪山家も素晴らしい家族である。

食卓を家族で囲い、息子は父を尊敬し、父は息子を甘やかすことなく厳しく指導する。
猪山家はまさに理想の家族の形なんですよね。
古き良き日本の家族。だからなのか観ていて懐かしい、そして知らぬ間に猪山家の一員になっている気さえしてしまう。
とても魅力的な家族でした。



この家族が本当の家族に見えたのはやはりキャスティングの妙でしょう。
どのキャストも嵌っているんですよね。
特に堺さん、猪山直之は堺さんしか演じることは出来ないと思います。
直之の誠実で穏やかなあの性格は堺さんそのものの様な・・・
時折可愛らしい反応をしたり、お駒との会話で少し照れる表情や、息子・直吉をしかる時の迫力ある声等、流石「笑顔で喜怒哀楽を表わす男」と言われるだけあるなぁと改めてその魅力を感じました。


仲間由紀恵さんもとてもお駒という女性にぴったりなキャスティングだったと思います。
お駒は芯がしっかりとした強い女性。愛情も深く、そして可愛らしい。
そんな仲間さんと、堺さんはふんわりとした雰囲気が似ているからという事も相俟って、自然でとても良い夫婦でした。

本作は加賀藩の御算用・猪山直之とその家族の生涯を激動の時代を背景に描いた作であり、派手さはなく、淡々と話が進みます。
しかしその淡々とした作りがじわじわと心を温めてくれる様な気がします。
現代日本に失われた物が沢山詰まった笑いあり、涙ありの温かい作品でした。



追記は初日舞台挨拶レポです!
↓↓↓




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テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

『悪人』  悪意に埋もれた最愛の果て

監督:李相日
原作:吉田修一
音楽:久石譲
出演:妻夫木聡、深津絵里、樹木希林、満島ひかり、柄本明、宮崎美子、松尾スズキ、余貴美子、光石研、岡田将生、塩見三省 他・・


制作年:2010年 日本

※PG-12


鑑賞日:2010年9月15日


< ストーリー >
保険外交員の女性の遺体が発見される。当初、捜査線上に浮かび上がったのは地元の大学生だったが、やがて容疑の焦点は土木作業員の清水へ。清水は警察の目を逃れ、光代という女を連れて逃避行に及ぶ。なぜ事件は起き、なぜ清水はその女と逃げるのか……。


悪人@ぴあ映画生活 より引用





芥川賞作家である吉田修一の同名小説の映画化。
監督は「フラガール」で日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ各賞を受賞した李監督。音楽はジブリ音楽で有名な久石譲という何とも奇跡的なタッグ。
また本作でモントリオール映画祭で深津絵里が最優秀女優賞を受賞するという快挙を成しえた。


これだけ揃えば作品への期待は強まり、鑑賞前からハードルが上がってしまうわけですが、そんなことは問題ない。

本作は心が揺さぶられるというか抉り、そして沈めさせられる。
映像描写、心理描写共にとにかく“生々しい”作品
人間というモノを丸裸にして見せ付けられたかの様な衝撃に暫く上映終了後も席を立つことが出来ませんでした。




真っ暗な道路がひたすら映し出される冒頭。
祐一郎の住む土地が田舎であるという事の現れであると共に、これからの彼の未来を暗示させる陰鬱な映像。
このシーンどこかで・・・と思って思い浮かべたのが『ゆれる』。

ゆれる [DVD]ゆれる [DVD]
(2007/02/23)
オダギリジョー香川照之

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本作と『ゆれる』は作風といい、シーンといい共通点が多々あります。
本作を気に入った方は『ゆれる』の鑑賞をお勧め。



妻夫木聡さん扮する祐一郎は出会い系サイトで知り合った女性・佳乃を撮影した動画をじっと見つめる。その時彼は何を思いその動画を見たのだろうか。
閉塞感に息がつまりそうな今の自分の人生から抜け出し、
自身を変える「誰か」に会いたいという気持ちが根底にあると共に、何も無い退屈な毎日に溜まりに溜まった感情、欲望を満たすため佳乃に会いに行く。


一方、佳乃は両親に可愛がられて育ち、真面目に社会人として自立をしている女性。
・・・と思いきや、実はそうではない。
両親が知らない彼女のもう一つの顔がある。
友人と彼女の会話もそうだが、その後のシーンでも観ていてこの子とは友達にはなりたくないな・・・と思わせるような女性なのである。

そう思わせる演技を自然にする満島ひかりも凄いと思う。
満島ひかりさんの演技をちゃんと観たのは『クヒオ大佐』ですが、彼女の演技はインパクトが強い。今後目が離せない女優です。
そんな自然な演技のお陰か被害者であるのに何故か佳乃に感情移入も同情も出来なかった。


佳乃が好意を持ち、そして事件のカギとなる大学生・増尾。
彼は恵まれた生活をし、周りからもチヤホヤともてはやされている。
それが故か、歪んだ人格の持ち主であり、実に幼い言動と行動を取る。その行い全てにどこか悪意が満ちているから不愉快な気持ちにさせられる。

こんな人間が居てもいいのか。
佳乃の父が彼に怒りをぶつけるシーンに異常に感情移入してしまったのだが、その所以は増尾だ。

社会に溢れる悪意の具現化のような増尾を岡田将生君が熱演。
こんな演技も出来るなんてと驚いてしまいました。もう単なるイケメン若手俳優なんて括りで彼を扱ってはいけませんね。本当に素晴らしい演技で、恐怖と憎悪を持ってしまいました。


殺人を起こし、不安と恐怖で押しつぶされそうになっている祐一郎は光代と出会う。
事件の発端となった出会い系サイトでの出会いというのがまた皮肉であるが、
そういったモノを使わなければ出会えなかったという事に二人の今までの人生が集約されていると思った。

祐一郎と同様に、何も無い田舎町で毎日毎日同じことを繰り返し、生まれた土地から一歩も出ること無くこのまま自分の人生が終わってしまうのではないか。

閉塞感と空虚感に満ちた日々からの脱却のきっかけとして、光代は「誰かに本気で出会いたかった」のだろう。

確かに祐一郎と出会う事で彼女の人生は大きく変わった。
殺人者である祐一郎との逃亡生活という普通ではない新たな人生を彼女は得た。

それが例え地獄へ続く道であっても彼女にとってはこの上ない幸せな時であったし、一番輝いた時でもあった。

またこの異常な生活が更に祐一郎との愛を深めることとなったのではないだろうか。

光に照らされることのない二人は逃亡によって照らし出され、それが生きていることへの実感に繋がっていたようにも思える。

灯台でのシーンは二人だけの世界であり、祐一郎がやっと“照らし”見つけ出したもっとも欲しかったもの=光代という印象を強く受けた。


しかし二人の行いによって悲劇と憎悪はさらに広まっていく。
被害者の佳乃とその家族。そして祐一郎の家族、光代の家族・・・

人の幸せを、人生を奪った人間が幸せになることは出来ないし、一人の人間ではなく多くの人間の幸せと人生を祐一郎は奪ったという避けることはできない現実。


しかしでは「悪人」は祐一郎なのか?と簡単に言う事が出来ないのが本作。

誰が悪人で誰が善人なのかは明確には描かれていない。
それは、人は誰しも善と悪を内に秘めた存在であり、
善と悪の境界線は曖昧であるという証である。
また誰が悪人かは主観によって分かれるものであると思う。



本作は多くは語らない。
寧ろセリフも音楽もない居心地悪い雰囲気に包まれた無音のシーンも登場する。
本で言う行間と言いますか、その無音の中に多くのセリフが詰め込まれ、観客はそれを読み取るという演出が何とも上手い。
現実をその度に突きつけられ、観客は考える訳です。


ずっと暗い画面がラストカットで明るくなるという演出も効果的でしたし、音楽もまた各者の揺れる心理を上手く表現していました。

何より各役者の演技は本当に素晴らしい。
モントリオールで受賞した深津絵里さんは勿論素晴らしいのですが、特に私は妻夫木さんの演技が見事だったと思いました。
最初の車中での表情が一変するシーンは祐一郎の秘めたる狂気を感じましたし、光代と居る時の子供の様な表情であったり、細かい表情の演技がもはや台詞となっていました。





彼らの逃亡の先には何があり、何が残るのか。


エンドロールの歌を聞きながら涙を拭かず、しばし自分なりの結論を導き出そうと考えさせられる作品です。



※追記はネタばれです。作品の結末に触れておりますのでご注意ください。


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テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

【od3】 『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』 青島の凱旋!

監督:本広克行
脚本:君塚良一
音楽:菅野祐吾
出演:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、ユースケサンタマリア、内田有紀、伊藤淳史、小泉孝太郎、小栗旬、斉藤暁、小野武彦、北村総一郎 他・・

制作年:2010年 日本

鑑賞日:2010年7月3日 @TOHOシネマズ六本木 7:40~ 舞台挨拶生中継の回


< Story >
高度なセキュリティシステムに包囲された新湾岸署への引っ越し作業が始まった。開署式まであと3日。ところが、金庫破りにバスジャック、さらには湾岸署から盗まれた拳銃で殺人事件まで起きてしまう。犯人の目的は? それは意外なところにあって……。


踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!@ぴあ映画生活より引用






・・はい、何を隠そうサブタイトルは「ジェネラルルージュの凱旋」から取ってます(笑)


さて待ちに待った踊る大捜査線の続編!
ドラマ放送時からの大ファンで、ネットワーク捜査員でもあります。
しかし、完成披露試写会、舞台挨拶共に外れ・・・
倍率50倍の試写会に当るとは思っていなかったものの残念無念。
なので初日の六本木 舞台挨拶生中継に行ってきました!土曜日に五時起きとは。自分の行動力にびっくり(笑)



初日初回の六本木は踊るファンで満席。あの熱さにも関わらず青島コートを着きている方、WPS Tシャツを着ている方等を見るとテンションあがりました。


さてここからは映画の感想をネタばれ無しで(ギリギリかもですが;)。

舞台挨拶(生中継)の感想はこちら⇒『踊る大捜査線ヤツらを解放せよ!』舞台挨拶生中継


7年待ったという気は正直あまりしませんでした。
それは多分OD3公開までに何度かDVDで観たりしていたからなのでしょう。
しかしタイトル見た瞬間「帰ってきたんだ・・・」という気持ちになり
感動しましたね~鳥肌立ちましたもん(笑)


今回青島は係長に昇進、登場シーンでは今までとちょっと雰囲気が違う青島ですが、
観ていくうちに係長になっても、7年経っても青島は青島だなと何だか安心。

そして「踊る大捜査線だ!」と思わせる冒頭のシーン。
もうここからOD1のリンクになっているからニヤリ。これだよね、とここでも安心。
このシーンもそうですが、今回はセリフやシーンが今までの作品とよくリンクしていたのが印象的でした。


湾岸署が新湾岸署へ引っ越しをする事から始まります。
相変わらず署内ごちゃごちゃしています(笑)初見ではリンクをあまり発見できませんでしたが、
このシーンには色々リンクがありそうです。

引っ越し作業でてんやわんやしている中で事件発生。
金庫破りとバスジャック、そして拳銃紛失事件。
事件同時多発は踊る映画版ではお決まりであり、複数の事件の中に核となる事件があるのは今回も同じ。
しかし各事件の関連性は本作の方が強い気がした。
OD2なんかは全く関係のない事件だったけれど、今回の同時多発事件は枝葉の如く関連性はある。

しかし事件がメインではないのが踊るシリーズ。
その事件から生み出される人間ドラマこそ踊るのメインであると思うので、
事件に関してはあれこれ求めないことにする。

いや、していたのですが、今回はそうもいかないかな・・・

踊るでは珍しく犯人側を前面に出してきているし、今回起きる事件には一種の社会風刺がある。
ネタばれになるのであまり書けませんが、今回のあの事件は最近では使い古されたパターンだと思うので、そこがちょっと残念だったんです。
今まではオマージュ的なものとして捉える事が出来ましたが、
それを何度もやると新鮮さは失われてしまう。
映画だからと言ってド派手な事はする必要はないし、「これどこかでやってなかったけ?」と思われるドラマや映画が多い昨今、やはり観客は新しい物が観たいと思うのではないのかなと思います。


また音楽が今回は今までの松本さんから菅野さんへ変わっています。
菅野さんは「SP」や最近では「新参者」等で印象的な音楽を産みだしている方です。
踊る大捜査線では音楽はかなり重要で、その存在はかなり大きいもの。
菅野さんの新たな踊るサウンドはブラスの重厚感と迫力ある音楽で良かったです。
良かったのですが、やはり「UNITY」「Moon light」は使ってほしかった。
オープニングも「Rhythm and police」を流してほしかったな・・・と思ってしまいました。
これらの音楽も踊るの一部ですからね。
大人の事情は分かるのですがちょっと残念でした。



なんだか残念な点しか未だ書いていないのでここからは明るい話を(笑)

今回新キャラが多数登場していますが、中でも滝藤賢一さん演じる王さんがかなり良い味だしてます。
滝藤さん、あの『クライマーズハイ』の神沢とは思えない豹変ぶり。
しっかりとキャラが確立していて、終盤かなり笑わせて頂きました。もっと王さんの活躍が観たいなと思ってしまいました。

そして和久さんの甥っ子、和久君ですが、伊藤さんの可愛らしいというか愛くるしいキャラクターが生かされたキャラで、湾岸署の癒しキャラになりそうな雰囲気がちらほらと。
和久ノートを持ち歩くという設定も中々面白く、懐かしの名台詞が出てきたときはジ~ンときました、


また本店と支店の調整役、鳥飼はクールで毒があるキャラクターでいるだけで何だかそわそわさせられる存在。
彼の正義と室井さんの正義。青島の正義がぶつかり合う瞬間にドラマが生まれます。


本作のテーマは「生と死」ですが、「正義」もサブテーマなのかなと思いました。

青島らの正義はもちろん。犯人にとっての正義がある。
人それぞれ正義は異なり、己の正義を貫こうとすると必ず壁に阻まれるし拒まれたり、他者を良くも悪くも巻き込む事になる。
正義のぶつかり合いの果てに見えるのも「生と死」なのであり、あのラストへと繋がる。



こうして振り返ると今回は終盤結構シリアス展開ですね。
しかしそこは踊るなので、なんとも不思議で泣けるのに笑えるんです。


しんみりさせ過ぎない演出は踊るならではであるし、
和久さんは亡くなってしまったけれど“生き続けている"という事が伝わる各シーン、そして終盤のシーンからラストへの下り等まさに意志の継承、生への讃歌


そして本作を観て思ったのが、これはドラマから映画、スピンオフまで全て観た事がある人とそうでない人では面白さが全く違うのではないかという事。


“集大成”である本作はファンの為の映画と言っても過言ではない気がしました。
(・・・良くも悪くも・・)


「生と死」のテーマのもうひとつの意味が踊るシリーズの新たな出発であり、
本作はエピローグでありプロローグ的な作品なのだと思います。



まぁ踊るに関してはあれこれ言わず楽しんだ方が良いですね。
“祭りに参加する”と言った感じで楽しむべき作品なのかなと思います。



何度か観るとまた感想が変わってくるよな不思議な作りとなっているので、
また劇場へ足を運ぼうと思っています。



二回目以降は最後のセリフの意味も変わってきそうな気がします。





OD3関連:踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ! - goo 映画



テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

『告白』  純粋たる悪意

監督 :中島哲也
脚本 :中島哲也
原作 :湊かなえ 『告白』
出演 :松たか子、岡田将生、木村佳乃

制作 :2010年 日本  R-15


鑑賞日 :2010年6月18日

< ストーリー >

ある中学校の1年B組、37人の13歳がいる雑然とした教室。終業式後のホームルームで教壇にたった担当の森口悠子は「私の娘が死亡しました。このクラスの生徒に殺されたのです」と衝撃の告白を始め、教室は静寂に包まれる。


告白@ぴあ映画生活より引用





第6回 本屋大賞受賞の湊かなえのデビュー作にしてベストセラーとなった同名小説の映画化。
監督、脚本は『下妻物語』『嫌われ松子の一生』の中島監督。
小説の映画化は大体が残念な結果となる為、原作未読で鑑賞。

原作未読なのですが、これは成功なのではないでしょうか?


終業式後のホームルーム。教師の話など聞かず、皆好き勝手な行動をしている生徒で埋め尽くされた荒廃した教室で、教師・森口悠子はある『告白』をする。

今まで教師の話など興味を持たず、聞こうとしなかった生徒たちを一瞬にして“虜”にしたその告白はあまりに衝撃的。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。 このクラスの生徒に殺されたのです。」


この告白から森口先生の復讐と、この告白をもとに様々な悪意と悲劇の連鎖が始まる。



手元にある原作を見ると全6章で構成されており、全て一人の人間の独白で、語り手が次から次へと変わっていく。
映画もこの独特の構成と同様の作りで、森口先生から少年Bの母親、美月、少年B、少年Aと語り手が変わる。

この語り手が変わっていくということは注意すべき点。
なぜならば彼らの主観で物事が語られているという事を忘れてはならない。

彼らの語る言葉が、物語が全て真実とは限らないからである。


そう考えて観ると、実にこの作品は恐ろしいものとなる。


最初の荒廃した教室、もしかしたらこれも森口先生から見た教室=彼女の主観で捉えた教室とも考えられるのではないだろうか。

娘を殺された母として見た教室はとても無機質で冷たく、生徒誰一人見えていないし、見ていないようなあの演出はそのような考えも浮かぶと共に、客観的に映し出しているようにも思える。


“主観”と“客観”の相対するがリンクし、“真実”を見極める為に必要な要素を織り込んだ演出で観る者に真実の判断を委ねているかの様に思えた。


本作は一応復讐劇に分類されるのかと言うと、そうとは言い切れない。

狂気に満ちた悲劇と言いますか、歪んだ思考と人間の根底にある残虐な一面、自己愛、孤独感などのあらゆる感情がが凝縮された復讐劇と簡単にいう事が出来ない作品でした。


また一言で言うと『グロテスク』な作品。
それは視覚的な物もありますが、精神的にもダメージを受けるグロテスクさ。
各登場人物、特に語り手となる者たちの存在もどこかグロテスクさがあるのです。



この作品にはモラルもインモラルも存在しないし、
正義も悪も存在しない虚構的、寓話的世界。



しかし非リアリズムの中に時折見えるリアリズムが垣間見えた時、
とても気分が悪く、恐怖と絶望感が沸き起こる。


少年達が犯罪を起こした要因は彼らの育った環境が大きい。
彼らを育てた親の存在も大きく、そんな親を取り巻く社会環境も大きな要因である。



取り分け本作では母親の存在が大きなキーとなる気がする。

罪を犯した息子を庇う母親。
息子に虐待をし捨てた母親。
娘を殺された母親・・・・



命は母から生み出される事に起因しているのだろうか。
少年達が必死に追い求める物も結局は母からの愛情であるし、
森口先生にもどこか母の愛情を求めている様に思えた。

そう考えるとあのラストと少年Aのあるセリフはリンクしているように思う。



だが少年法への問題提起や現代社会が抱える闇の部分を皮肉った様な描かれ方にも受け取れるが、
社会批判的なメッセージを強く込めて作り上げられた作品ではないし、
そんな事を求めていないようにも思えた。



軽快な音楽、楽しそうな明るいシーンとは裏腹に実際に行われていることは残虐。
この対比とCGを用いたまるでダークファンタジーのような演出は見事。
子供が持つ純真さと残酷さが実に上手く表れるこの演出は中島監督だから成せるのでしょう。

この心地よい違和感がこの作品の魅力ではないかと思います。

 

また松たか子の淡々とした演技が実に良く、作品に嵌まっていた。
終始機械的で淡々とした演技によって逆に深い悲しみと憎悪が伝わり。復讐の根底にある森口先生の暗く深い悲しみと娘への愛を考えると辛くて堪らなかった。

特に中盤の路上でのシーンはあらゆる感情が含まれており、
復讐者と人間の森口悠子がそこに居た。




これは凄い。久しぶりにインパクトある凄い作品を観た気がする。

元々パク・チャヌク監督の『復讐三部作』などの復讐物が好きなのもありますが、
このまま行けば今年のマイベストになるかもしれない。




“な~んてね”。




以下追記に続く・・・・


! 追記では完全ネタばれ。結末に触れておりますので未鑑賞の方はご注意ください。

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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

『孤高のメス』 命の継承、未来への一刀

孤高のメス【DVD】孤高のメス【DVD】
(2010/12/03)
堤真一夏川結衣

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監督:成島出
出演:堤真一、夏川結衣、吉沢悠、松重豊、中越典子、柄本明、成宮寛貴、平田満、余貴美子、生瀬勝久 他

2010年 日本

鑑賞 : 2010年5月14日 @有楽町朝日ホール 特別試写会


< Story >

1989年、ある地方都市の市民病院。患者より権威、体制を重んじ手術もまともにできない医師が幅をきかせていたその病院に、患者第一主義を貫く外科医、当麻鉄彦が赴任してくる。“命“を何より重んじ己の信念を曲げず、当麻は次々と困難なオペを成功させていくが……。



孤高のメス@ぴあ映画生活より





先月久しぶりに申し込んだ試写会に当り鑑賞。
先に『ぴあ映画生活』に春77のHNでレビューを投稿していますので、そのレビューと大体被ってます。




原作は現役の医師・大鐘稔彦の長編小説。
現在文庫本が売られていますが、原作を買おうと書店に行ってびっくり。
なんと6巻もあるんですね。続編も入れれば10巻という大長編作。
映画では脳死肝移植がメインですが、原作では脳死肝移植を始め様々な事柄が描かれています。
監督もこの長編作を約二時間に纏める事に苦労されたようですが、原作にはいない看護師・中村浪子の息子を作りだしたことで、上手くまとめた脚本を作られたなという印象を持ちました。



舞台は1989年。救える命を救おうとはせず、地位と名誉しか考えずいい加減な治療しか行わない医師、
腐敗仕切った医療現場・・・そんな環境に身を置くがゆえに誇りを失いかけた看護師・中村浪子。
そんな彼女の前に米国帰りの外科医・当麻が現れる。

冒頭の野本医師のオペシーンで1989年の医療現場の現実を突きつけられ、生々しいオペシーンに驚いた。
このシーンで生瀬さん扮する野本に嫌悪感を抱くとともに、
もし自分がこのような扱いをうけたらと思うと不安と恐怖の感情が湧き出てきた。
このシーンで1989年の手術室に自分もいるかの様な錯覚を覚え、看護師・中村浪子の気持ちと同調した。

浪子との同調、彼女への感情移入の度合いによって、本作の捉え方や、鑑賞後の気持ちは多少なり違ったものになると思います。
というのも、本作は浪子の息子が彼女の日記を読み、在りし日の母の姿を知っていくという構成になっている為、
浪子の視点で当麻が起こす奇跡を見るという事が本作の一つのキーとなるかと思います。


医療従事者としての誇りや信念を失いかけていた浪子をはじめとする市民病院の医師、看護師らは当麻の“美しいオペ”に携わった事で「目の前の患者を何がなんでも救いたい」という信念に感化され、次第に変わっていく。

当麻の手術の腕も素晴らしいが、彼の人柄も魅力的で、院内の空気が彼の存在によって次第に浄化されていく。

しかしそんな穏やかな日々は長くは続かず、ある日病に倒れた市長が運ばれてくる事によって、
当麻の決断の日が、現行医療制度へ戦い・・・患者と医療の未来への戦いが始まった。


吹き荒れる病院の屋上でのシーンは本作の名シーンの一つ。
日食の日に撮影がされたというこのシーンは余貴美子さんの心に迫る素晴らしい演技と、彼女の思いを受ける当麻と浪子を演じる堤さんの静の演技と夏川さんの母・看護師の両面から出る心情を表した演技の静かなぶつかり合い。
彼等の苦悩と当麻の苦渋の決断を表すかの如く風が強く吹き荒れ、あたり一面真っという閉塞感すら覚える画。
このシーンは計算して撮られたのか自然が成し得た物なのかは分かりませんが、奇跡に近いシーンだと思いました。



苦渋の決断を強いられた当麻は自信の信条のもと、
例え法律で認められていなくても、世間が殺人と言おうとも、当麻は命の継承儀式とも言える「脳死肝移植」に挑む。




扱うテーマは重いのですが、見終わった後は爽快感がありました。
その爽快感の要因の一つは堤さん扮する主人公・当麻のキャラクターが大きな要因ではないかと。
鑑賞前は『クライマーズハイ』の悠木の様な熱く激しい人物かと思っていたのですが、
全く異なるキャラクターで、熱い物は内に秘めてはいるものの、前面にその熱さを出すことはしないんですよね。
そして何より天然で可愛らしい先生。

「この人と仕事がしたい、していて楽しい」と周囲に思わせる様な魅力あふれる医師であるからこそ、
彼の“信念”に共感した人間が多かったのではないかと思いました。
それは観ている此方も同じかと。


また本作は医療ミス、移植、地域医療問題、医師不足等現代に通じる医療問題と共に、市長とその娘、浪子と息子、静と息子等親子愛もサブテーマの一つであり、家族や人との繋がり、出会いの大切さを淡々と描くことで観る者に静かに心に響く、染みわたっていく作品です。


もうひとつの見どころは実際生体肝移植を行っている医師の指導のもとに撮影されたリアルなオペシーンです。
出演者は実際のオペを見学。そして実際のオペ手順を学んで吹き替えは殆ど無しでオペシーンを撮影したとか。
堤さんは撮影の合間には結紮の練習をしたり、手術キットを持ち帰り、自宅での練習もされていたそうで、
映画のオペシーンでの堤さんの手さばきは実に華麗で外科医そのものでした。


キャスト、演出、テーマ等は本当に良かったのですが、日記を読み過去に遡るという作りの為、
浪子のナレーションが随所に入る。これが少し説明過多な気がして、
『クライマーズハイ』の様な高揚感や緊迫感が本作は少し弱かった様に思えました。
後半もう少し盛り上がりを見せてくれたら満点だったんですけどね。


『クライマーズハイ』が“動”で『孤高のメス』が“静”。


本作の魅力は静寂の中にある暖かさなのかもしれません。



テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

るい

Author:るい
【好きな俳優】
堺雅人、堤真一(特にこの二人が好き!)、大沢たかお、織田裕二、天海祐希、深津絵里

【舞台】
劇団☆新感線に嵌まってます!
ここ最近毎月観劇。

観劇予定: 時計仕掛けのオレンジ / テンペスト / シェイプオブシングス / NODA MAP・南へ / 劇団新感線・港町純情オセロ 


【映画】
洋画、邦画、韓国、香港とジャンル問わず何でも観てます。
最近は邦画鑑賞率高いです。


【ドラマ】
踊る大捜査線のファンでNW捜査員。

SP-警視庁警備部警護課第四係-が心底好き。


【小説】
佐々木譲、今野敏、貫井徳郎、雫井脩介、横山秀雄、海堂尊を好んで読みます。


■物凄いマイペースにやっているので不定期更新です。
なるべく観たものは全て感想を書きたいなと思っていますが
書かない or かなり時間が経ってから書くこともあります。

■映画、舞台、好きな俳優、ドラマの話が多めです。
感想はあくまで私個人のものなので「あ~この人はこう感じたんだ」程度に受け止めてください。



■TB、コメントお気軽に♪
(但し記事内容と関係のない物等はこちらの判断で削除させて頂きます。)
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「踊る大捜査線THE MOVIE3」2010年7月3日公開!



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