スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『墨攻』   ‘兼愛’を説き平和を望んだ者の孤独。何故人は戦い、戦いは何を産み出すのか。

墨攻 [DVD]墨攻 [DVD]
(2009/01/28)
アンディ・ラウアン・ソンギ

商品詳細を見る
<ストーリー>

 戦国時代。趙と燕の国境にある粱城は、趙によって攻撃されようとしていた。10万の趙軍に対し、梁城の全住民はわずか4000人。頼みの綱は墨家の救援部隊だったが、間に合いそうもなく、粱王は降伏を決断する。墨家の革離(かくり)がたった1人で駆けつけたのは、その直後だった。兵に関する全権を粱王から与えられ、早速城を守る準備に取りかかる革離。趙軍の指揮官・巷淹中は革離を好敵手と見なし、やがて激しい攻撃を開始する。



2006年  中国・日本・香港・韓国


(「映画生活 Gaga」   より引用。)







 1992年から4年以上に渡りビックコミックに連載された森秀樹作の同名漫画の映画化。漫画の原作は1990年に発表され直木賞候補となった酒見賢一氏の小説『墨攻』。映画を観るまで漫画と小説の存在を知らなかったのですが、漫画、小説共に評価が高く、映画で主演を務めたアンディ・ラウがファンであるように日本のみならず、アジアでの人気もある作品なのですね。


 本作の時代は紀元前770年から紀元前403年までの春秋戦国時代。紀元前403年、晋の韓・魏・趙が晋を分割前が春秋時代。以後の紀元前221年までを戦国時代といい、本作は紀元前370年頃が舞台。



 冒頭に出る「墨攻」の文字に迫力があり、とてもカッコいいのですが、このタイトル文字はアンディ・ラウが書いたものだそうで『ベルベット・レイン』のタイトルもそうでしたが今回もその達筆を披露しています(日本版のポスター等に使われている文字はアンディ・ラウのものではないそうです。)。そしてこの冒頭、結構重要なのでお見逃し無く。



  趙によって陥落の危機に陥った梁は墨家の救援を待つが現れる気配がない。梁王は降伏の意思を趙に伝えると決意する。諦めていた墨家が現れたのはその直後。しかし墨家は一人・・・一人でどうするのだと梁の民共々不安になりましたがそんな不安を消し去るが如く敵を撤退させる革離。「非攻」の精神、守城のプロがどういった方法で大軍から梁を守り抜くのか期待が膨らむ。



 墨家とは当時儒家と並ぶ勢力であり、墨子が創設した思想家集団。戦乱の世に平和を説くこの墨家は実在したそうで、「兼愛」「非攻」「天志」「明鬼」「尚賢」「尚同」「節用」「節葬」「非楽」「非命」‘墨家十論’に従い行動する。本作ではこのうちの「兼愛」と「非攻」が主に描かれていたと思います(詳細は墨家 wikipedia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%  に)。墨家である主人公・革離は自分の国でもない国を大勢の敵を相手に守り抜くため梁にやってきます。



 墨家は‘守りのスペシャリスト’といった存在であり、たとえ多勢であってもひるむ事は無く、優れた統率力で民の心を掴み、戦略によって大勢の敵に立ち向かい守り抜く。前半はこうした趙と梁(革離)の攻防戦が見もので、革離がとる戦略が面白い。



 大勢の敵に対して梁の兵力は極わずかで誰しもが敵うはずがないと考える。しかし革離は民に対し戦意を湧かせ、‘武’には‘智’で挑めと様々な戦略を披露する。その戦略はかつて日本史が大好きであった私にとって武将・楠木正成を思い出し、そして裏話として聞いた様々な籠城戦法が出てきたので興味深かったです。



 また敵である趙軍の描かれ方がとても面白い。趙軍の数はかなりのものなのでCGを交えているとは思うのですが(後ろの方に変な動きをしている馬が気になりました・・)迫力ある映像が展開されるのですが、大勢であっても個々の動きが細部まできちんと描かれていました。特に面白いなと思ったのが盾の使い方なのですが、行進しながら盾を上下させて後ろにいる兵士を守るというのが新鮮でした。



 予告編やコピーに「10万の敵にたった一人で挑む」となっていたので、てっきりこうした知略を沢山観られるものだとおもっていたのですが、籠城は前半のみで、途中から話しがガラッと変わっていきます。この突然の変わり様に少し戸惑うと共にもっと革離の知略が観たかった・・と残念な気持ちになりました。



 後半からは趙との戦いから梁の内紛へ話しが変わり、この内紛から墨家の‘兼愛’と‘非攻’の精神への理想と現実の壁を思い知らされます。革離は常に墨家が説く‘兼愛’ ‘非攻’の精神と、自身の行いの矛盾に悩まされていたのですが、そうした時に人間の欲深さや傲慢さといった‘人の深いところで眠る姿’が革離の前に現れ、現実を思い知るわけです。‘兼愛’ ‘非攻’といった墨家の思想はもう時代遅れなのか、ただの理想で終わってしまうのか。争いを終えることなど出来ないのか・・・。革離の苦悩する姿から‘戦う’ということの問題提起がなされます。


  そして何故戦い、何のために命をかけてまで挑むのかなど人々の台詞や行動によって終盤にはその‘答え’が多方面から描かれる。革離の考える戦争と勝利、巷淹中の考える勝利の形。そして梁の王の存在自体も本作のテーマを描いており、感慨深いものがありました。また終盤印象的だったのが趙と梁の戦いのシーン。途中で突然画面が油絵のようになるのですが、この表現法によってまるで戦争の絵を鑑賞しているかのような(観客と映画の)構図となり、観客に‘戦争を客観視’させうことによって戦争の無意味さや惨さと言った事を伝えようとする。この表現方法はとても面白いと思いますし、メッセージも伝わります。しかし全体的なバランスがこの突然の表現法で若干崩れたような気にもなりました。挿入の仕方が原因なのでしょうか・・ここが少々残念。


 
 本作は漫画に沿ったもので、小説とは異なる部分が多いようですが、漫画と小説にも登場しないオリジナルキャラクターであるファン・ビンビン演じる女性兵士・逸悦の存在で終盤の話しもかなり原作とは違うらしい。そこが吉とでたか凶とでたかは人それぞれだと思うのですが、この逸悦役のファン・ビンビンがまた凄い声をしていまして、可愛らしい女優さんなのでこうした戦いの世界では浮き気味だったりするのですが、私はさほど悪い方向には行かなかったと思います。これによって冒頭の少女が活きると思いますし、革離の目指したものと現実が描かれたと思うので。



 ファン・ビンビンも魅力的でしたがやはり主演のアンディ・ラウ、そして敵役アン・ソンギは存在感があり良かったです。特にアン・ソンギの巷淹中。最後の表情に様々な心情が映し出され、梁王を見つめるあの目がなんともいえませんでした。また脇を固める梁の若君チェ・シオン、子団役ウー・チーロンなどもアンディ・ラウやアン・ソンギと言ったベテランに負けない存在感で作品世界に引き込んでくれます。




 このように魅力的な俳優、深遠なるテーマ、迫力ある映像であったのですが、やや詰め込みすぎていたような気もしました。観客をかせようとする過剰な演出など何か惜しいと思ってしまうところがあるものの、全体的に私は好きな作品です。一見派手そうでじつは地味目なこの作品、見る価値ありと私は思いました。



 音楽が『デスノート 前編』『デスノート the Last name』『南極日誌』などを手掛けた川井憲治氏なのも注目です。




<参考>

墨家 wikipedia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5% 

春秋時代 wikipedia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6

春秋戦国時代 wikipwdia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%



墨攻@映画生活

関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

1 ■気になるけど・・・

気になる映画ではありますが何となく「行こう!」ってまで思う何かが足りないんですよね・・・(汗)。

ただrainさんの記事を読んで行けたら行こうかなと思いました。

2 ■>ヨッシーさん

気になるけれど行こうという気まではならないときってありますよね~。
本作は賛否両論のようですが私は良かったです。機会があれば是非(^_^)

3 ■無題

冒頭の文字、アンディの書なんですか!
へぇ~、すごい上手!
私も、この映画、楽しめました。
時代劇ですが、香港映画のテンポの速さがあって、アンディもアン・ソンギもよかったし。
アジアならではの思想を、強く訴えているところもアジア映画らしくって気に入っています。
アジアが結集すると、こんなに面白い映画になるんだって、うれしくなりました。
試写のとき、日本から参加したカメラマンの阪本さんは、日本でこういうスケールの映画が作れないと嘆いていましたが、
国にこだわらず、どんどん、面白い映画を作ってほしいです。

4 ■>hoppenさん

そうなんですよ~冒頭の文字はアンディの字なんだそうです。『ベルベット・レイン』のタイトル「江湖」もアンディが書いていたりと達筆なんですね(^_^)


前半と後半で話しが変わり、墨家思想や戦いとは何かなどさまざまなメッセージが描かれていましたよね。
アンディ・ラウとアン・ソンギの演技も良かったですし、私も楽しめました。


試写会にいかれたのですか!羨ましいです。
今後もアジアの力を結集した優れた作品が世に出て欲しいものですね(^_^)

5 ■こんばんは!

いつもありがとうございます!
あたしはあの声、何も感じなかったのですが、、、てか、女兵士がいても良いとは思うのですが、
ラブストーリーは、よけいだったような気がします。
またよろしくお願いしますね!

6 ■俳優さんがよかったです

あ~男性のみですが・・・ワタシは二人が敵に追われるシーンで、ビンビンさんの動きが、あまりにもナヨナヨしてて、女剣士には見えなかったです。
普通のきれいな農民役でもよかったのに~と思いました。
アンディはカッコよかったから、それだけでも満足でした。
TBさせてもらいました。

7 ■>猫姫さん

ファン・ビンビンの声気になりませんでしたか?独特な声だったので印象強かったです。

ラブストーリーが蛇足だと言う意見多いですよね^^;

8 ■>サラさん

いつも有難う御座います。


アンディ・ラウ、アン・ソンギをはじめ俳優の演技が良かったですよね。

ファン・ビンビンの存在は賛否両論ですよね。原作にはないキャラということもあり、やはり違和感を感じてしまうのでしょうかね・

私は声以外は特に気にならなかったです(声ばかり言ってますね(笑))。
プロフィール

るい

Author:るい
【好きな俳優】
堺雅人、堤真一(特にこの二人が好き!)、大沢たかお、織田裕二、天海祐希、深津絵里

【舞台】
劇団☆新感線に嵌まってます!
ここ最近毎月観劇。

観劇予定: 時計仕掛けのオレンジ / テンペスト / シェイプオブシングス / NODA MAP・南へ / 劇団新感線・港町純情オセロ 


【映画】
洋画、邦画、韓国、香港とジャンル問わず何でも観てます。
最近は邦画鑑賞率高いです。


【ドラマ】
踊る大捜査線のファンでNW捜査員。

SP-警視庁警備部警護課第四係-が心底好き。


【小説】
佐々木譲、今野敏、貫井徳郎、雫井脩介、横山秀雄、海堂尊を好んで読みます。


■物凄いマイペースにやっているので不定期更新です。
なるべく観たものは全て感想を書きたいなと思っていますが
書かない or かなり時間が経ってから書くこともあります。

■映画、舞台、好きな俳優、ドラマの話が多めです。
感想はあくまで私個人のものなので「あ~この人はこう感じたんだ」程度に受け止めてください。



■TB、コメントお気軽に♪
(但し記事内容と関係のない物等はこちらの判断で削除させて頂きます。)
※コメントは承認制です。


※引っ越し前の記事にあるブログ内リンクは旧ブログのものです。(ランキング含)現在修正中の為リンク先には飛べません。
(旧blog⇒enjoy! MOVIE LIFE)

カテゴリ
最新記事
最新トラックバック
最新コメント
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。