スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『告白』  純粋たる悪意

監督 :中島哲也
脚本 :中島哲也
原作 :湊かなえ 『告白』
出演 :松たか子、岡田将生、木村佳乃

制作 :2010年 日本  R-15


鑑賞日 :2010年6月18日

< ストーリー >

ある中学校の1年B組、37人の13歳がいる雑然とした教室。終業式後のホームルームで教壇にたった担当の森口悠子は「私の娘が死亡しました。このクラスの生徒に殺されたのです」と衝撃の告白を始め、教室は静寂に包まれる。


告白@ぴあ映画生活より引用





第6回 本屋大賞受賞の湊かなえのデビュー作にしてベストセラーとなった同名小説の映画化。
監督、脚本は『下妻物語』『嫌われ松子の一生』の中島監督。
小説の映画化は大体が残念な結果となる為、原作未読で鑑賞。

原作未読なのですが、これは成功なのではないでしょうか?


終業式後のホームルーム。教師の話など聞かず、皆好き勝手な行動をしている生徒で埋め尽くされた荒廃した教室で、教師・森口悠子はある『告白』をする。

今まで教師の話など興味を持たず、聞こうとしなかった生徒たちを一瞬にして“虜”にしたその告白はあまりに衝撃的。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。 このクラスの生徒に殺されたのです。」


この告白から森口先生の復讐と、この告白をもとに様々な悪意と悲劇の連鎖が始まる。



手元にある原作を見ると全6章で構成されており、全て一人の人間の独白で、語り手が次から次へと変わっていく。
映画もこの独特の構成と同様の作りで、森口先生から少年Bの母親、美月、少年B、少年Aと語り手が変わる。

この語り手が変わっていくということは注意すべき点。
なぜならば彼らの主観で物事が語られているという事を忘れてはならない。

彼らの語る言葉が、物語が全て真実とは限らないからである。


そう考えて観ると、実にこの作品は恐ろしいものとなる。


最初の荒廃した教室、もしかしたらこれも森口先生から見た教室=彼女の主観で捉えた教室とも考えられるのではないだろうか。

娘を殺された母として見た教室はとても無機質で冷たく、生徒誰一人見えていないし、見ていないようなあの演出はそのような考えも浮かぶと共に、客観的に映し出しているようにも思える。


“主観”と“客観”の相対するがリンクし、“真実”を見極める為に必要な要素を織り込んだ演出で観る者に真実の判断を委ねているかの様に思えた。


本作は一応復讐劇に分類されるのかと言うと、そうとは言い切れない。

狂気に満ちた悲劇と言いますか、歪んだ思考と人間の根底にある残虐な一面、自己愛、孤独感などのあらゆる感情がが凝縮された復讐劇と簡単にいう事が出来ない作品でした。


また一言で言うと『グロテスク』な作品。
それは視覚的な物もありますが、精神的にもダメージを受けるグロテスクさ。
各登場人物、特に語り手となる者たちの存在もどこかグロテスクさがあるのです。



この作品にはモラルもインモラルも存在しないし、
正義も悪も存在しない虚構的、寓話的世界。



しかし非リアリズムの中に時折見えるリアリズムが垣間見えた時、
とても気分が悪く、恐怖と絶望感が沸き起こる。


少年達が犯罪を起こした要因は彼らの育った環境が大きい。
彼らを育てた親の存在も大きく、そんな親を取り巻く社会環境も大きな要因である。



取り分け本作では母親の存在が大きなキーとなる気がする。

罪を犯した息子を庇う母親。
息子に虐待をし捨てた母親。
娘を殺された母親・・・・



命は母から生み出される事に起因しているのだろうか。
少年達が必死に追い求める物も結局は母からの愛情であるし、
森口先生にもどこか母の愛情を求めている様に思えた。

そう考えるとあのラストと少年Aのあるセリフはリンクしているように思う。



だが少年法への問題提起や現代社会が抱える闇の部分を皮肉った様な描かれ方にも受け取れるが、
社会批判的なメッセージを強く込めて作り上げられた作品ではないし、
そんな事を求めていないようにも思えた。



軽快な音楽、楽しそうな明るいシーンとは裏腹に実際に行われていることは残虐。
この対比とCGを用いたまるでダークファンタジーのような演出は見事。
子供が持つ純真さと残酷さが実に上手く表れるこの演出は中島監督だから成せるのでしょう。

この心地よい違和感がこの作品の魅力ではないかと思います。

 

また松たか子の淡々とした演技が実に良く、作品に嵌まっていた。
終始機械的で淡々とした演技によって逆に深い悲しみと憎悪が伝わり。復讐の根底にある森口先生の暗く深い悲しみと娘への愛を考えると辛くて堪らなかった。

特に中盤の路上でのシーンはあらゆる感情が含まれており、
復讐者と人間の森口悠子がそこに居た。




これは凄い。久しぶりにインパクトある凄い作品を観た気がする。

元々パク・チャヌク監督の『復讐三部作』などの復讐物が好きなのもありますが、
このまま行けば今年のマイベストになるかもしれない。




“な~んてね”。




以下追記に続く・・・・


! 追記では完全ネタばれ。結末に触れておりますので未鑑賞の方はご注意ください。
!以下完全ネタばれ、結末に触れておりますので要注意!




さて本作の結末ですが、どうやら原作とは少し異なるようですね。
まだ原作を読んではいないので、どれほど違うのか、どちらが衝撃的なのかは分かりません。


本作の結末が衝撃的とされるのならば、それはあの森口先生の行為を真実と捉えた場合ではないでしょうか。


そこで、本当に森口先生は少年の母親の研究室に赴き少年手製の爆弾を置いて行ったのか。

また本当に爆弾は爆発し、少年の母親は死んでしまったのかという疑問が出てきます。



どちらとも取れるあの終わり方。

それこそ今度は観客の主観で語れるあの作りは賛否両論なのかもしれませんが、それが狙いなのでしょうから成功なんでしょう。


で、私は森口先生の結末に至るまでの行動とセリフを考えた結果、森口先生は本当に少年の母親に会いに行ったのでしょう。

しかし爆弾は置いておらず、爆発も起きてはいないんじゃないかと思いました。


愛美の父・桜宮のセリフ。最初の森口先生のセリフ・・・

まず学校に警察を呼んだというのは嘘ではないか。
少年を法律で裁く(警察につき出す)ことを望んでいないと語った森口先生が警察を呼ぶとは思えない。


牛乳に血を混入していなかったし、
彼等は何でもそのまま言ったことを信じるとファミレスで笑っていた。


つまり嘘でも少年にとっては真実以上に真実となり、命を奪うことではなく、
精神を殺した復讐方法という事ではないかなと思いました。

爆発を見届けてから体育館へ行くこともできないだろうし、
少年の爆弾にどれほどの殺傷能力があるかも分からない。


しかし、ラストの「な~んてね」


これは恐らく「更生の道が始まるのです」に掛けてるんだと思うのですが、
もし違っていたら・・・・




「血を混入してない」
「彼は憎しみを憎しみで返してはいけないと言った」

これらに掛っていたら、少年のあのイメージも真実になるのかも・・




そうおもうとあのラストのセリフはぞっとする。
実にうまいセリフを追加したものだ・・。





関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

告白

告白’10:日本 ◆監督:中島哲也「嫌われ松子の一生」「下妻物語」◆出演:松たか子、岡田将生、木村佳乃◆STORY◆女教師・森口悠子の3歳の一人娘・愛美が、森口の勤務する中学校のプールで溺死体にて発見された。数ヵ月後、森口は終業式後のホームルームにて「私...

『告白』

俺は・・・牛乳に負けたのかも、知れねぇな・・・ いやぁ、なかなか面白かったよ。 原作本も立ち読みでざっと斜め読みした事があった...

告白 (松たか子さん)

映画『告白』は、『嫌われ松子の一生』、『パコと魔法の絵本』などで有名な中島哲也監督が、2009年本屋大賞を受賞した湊かなえ氏の同名小説にほれ込んで映画化した作品です。 松たか子さんは、主演の教師・森口悠子 役で出演しています。 先日、劇場に観に行きました。 ●...

【映画評】告白

中島哲也監督が松たか子主演で淡々と描く、幼い娘を生徒に殺された女教師の復讐劇。

告白

命を知るための課外授業。  

『告白』・・・“なーんてね”

2009年本屋大賞を受賞した湊かなえの原作を、今年4月の文庫化と同時に手にし数時間で読了した。・・・最悪の読後感だった。何の救いもなく、歪みきった登場人物の誰一人として共感できる者もなく・・・。

★「告白」

今週の平日休みの2本目。 松たか子はなーー、声のトーンがイマイチ、ひらりんに合わず、 ヴィヨンの妻もHEROの検事の助手も良かったけど・・・。 今回は原作の評判が良かったのと、 予告編見てたら、ドッカーーンと爆発するシーンがあったので、 こりゃまた、中島哲...

映画:告白

 予告編の短い告白だけで惹き付けられてしまった映画、告白を観てきました。

映画「告白」

映画「告白」公式サイト 映画「告白」映画情報(eiga.com) ○作品情報(eiga.comより) 監督・脚本:中島哲也 プロデューサー:石田雄治、鈴木ゆたか、窪田義弘 原作:湊かなえ 撮影:阿藤正一、尾澤篤史 照明:高倉進 美術:桑島十和子 製作国:2010年日本映画 上映時間:1...

『告白』 はじけたのは何か?

 「私には判っている。」  『告白』の登場人物たちが、何度か口にするセリフだ。  「私には判っている。」  そう云いながら、判ってい...

告白

告白 ★★★★★(★満点!) 私の2010年、Best of movieでした。DVDになりましたね。 作品としての演出、完成度の高さに脱帽(いや、話は暗いんですけどね) すごいです。 原作も読んだけど、映画もすごい。本の映画化が多い中でも、映像化されても楽しめた作品です?...

別館の予備(感想202作目 告白)

7月17日 告白 TBアドレス http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/hum09041/10955203104/188b5f83 さや侍&X-MEN:ファースト・ジェネレーション& エクスペンダブルズ&ディア・ドクター& ...

告白(感想202作目)

告白はWOWOWでして6月に観たけども

コメント

非公開コメント

プロフィール

るい

Author:るい
【好きな俳優】
堺雅人、堤真一(特にこの二人が好き!)、大沢たかお、織田裕二、天海祐希、深津絵里

【舞台】
劇団☆新感線に嵌まってます!
ここ最近毎月観劇。

観劇予定: 時計仕掛けのオレンジ / テンペスト / シェイプオブシングス / NODA MAP・南へ / 劇団新感線・港町純情オセロ 


【映画】
洋画、邦画、韓国、香港とジャンル問わず何でも観てます。
最近は邦画鑑賞率高いです。


【ドラマ】
踊る大捜査線のファンでNW捜査員。

SP-警視庁警備部警護課第四係-が心底好き。


【小説】
佐々木譲、今野敏、貫井徳郎、雫井脩介、横山秀雄、海堂尊を好んで読みます。


■物凄いマイペースにやっているので不定期更新です。
なるべく観たものは全て感想を書きたいなと思っていますが
書かない or かなり時間が経ってから書くこともあります。

■映画、舞台、好きな俳優、ドラマの話が多めです。
感想はあくまで私個人のものなので「あ~この人はこう感じたんだ」程度に受け止めてください。



■TB、コメントお気軽に♪
(但し記事内容と関係のない物等はこちらの判断で削除させて頂きます。)
※コメントは承認制です。


※引っ越し前の記事にあるブログ内リンクは旧ブログのものです。(ランキング含)現在修正中の為リンク先には飛べません。
(旧blog⇒enjoy! MOVIE LIFE)

カテゴリ
最新記事
最新トラックバック
最新コメント
月別アーカイブ
検索フォーム
join
リンク
RSSリンクの表示
favorite
「踊る大捜査線THE MOVIE3」2010年7月3日公開!



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。