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『悪人』  悪意に埋もれた最愛の果て

監督:李相日
原作:吉田修一
音楽:久石譲
出演:妻夫木聡、深津絵里、樹木希林、満島ひかり、柄本明、宮崎美子、松尾スズキ、余貴美子、光石研、岡田将生、塩見三省 他・・


制作年:2010年 日本

※PG-12


鑑賞日:2010年9月15日


< ストーリー >
保険外交員の女性の遺体が発見される。当初、捜査線上に浮かび上がったのは地元の大学生だったが、やがて容疑の焦点は土木作業員の清水へ。清水は警察の目を逃れ、光代という女を連れて逃避行に及ぶ。なぜ事件は起き、なぜ清水はその女と逃げるのか……。


悪人@ぴあ映画生活 より引用





芥川賞作家である吉田修一の同名小説の映画化。
監督は「フラガール」で日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ各賞を受賞した李監督。音楽はジブリ音楽で有名な久石譲という何とも奇跡的なタッグ。
また本作でモントリオール映画祭で深津絵里が最優秀女優賞を受賞するという快挙を成しえた。


これだけ揃えば作品への期待は強まり、鑑賞前からハードルが上がってしまうわけですが、そんなことは問題ない。

本作は心が揺さぶられるというか抉り、そして沈めさせられる。
映像描写、心理描写共にとにかく“生々しい”作品
人間というモノを丸裸にして見せ付けられたかの様な衝撃に暫く上映終了後も席を立つことが出来ませんでした。




真っ暗な道路がひたすら映し出される冒頭。
祐一郎の住む土地が田舎であるという事の現れであると共に、これからの彼の未来を暗示させる陰鬱な映像。
このシーンどこかで・・・と思って思い浮かべたのが『ゆれる』。

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オダギリジョー香川照之

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本作と『ゆれる』は作風といい、シーンといい共通点が多々あります。
本作を気に入った方は『ゆれる』の鑑賞をお勧め。



妻夫木聡さん扮する祐一郎は出会い系サイトで知り合った女性・佳乃を撮影した動画をじっと見つめる。その時彼は何を思いその動画を見たのだろうか。
閉塞感に息がつまりそうな今の自分の人生から抜け出し、
自身を変える「誰か」に会いたいという気持ちが根底にあると共に、何も無い退屈な毎日に溜まりに溜まった感情、欲望を満たすため佳乃に会いに行く。


一方、佳乃は両親に可愛がられて育ち、真面目に社会人として自立をしている女性。
・・・と思いきや、実はそうではない。
両親が知らない彼女のもう一つの顔がある。
友人と彼女の会話もそうだが、その後のシーンでも観ていてこの子とは友達にはなりたくないな・・・と思わせるような女性なのである。

そう思わせる演技を自然にする満島ひかりも凄いと思う。
満島ひかりさんの演技をちゃんと観たのは『クヒオ大佐』ですが、彼女の演技はインパクトが強い。今後目が離せない女優です。
そんな自然な演技のお陰か被害者であるのに何故か佳乃に感情移入も同情も出来なかった。


佳乃が好意を持ち、そして事件のカギとなる大学生・増尾。
彼は恵まれた生活をし、周りからもチヤホヤともてはやされている。
それが故か、歪んだ人格の持ち主であり、実に幼い言動と行動を取る。その行い全てにどこか悪意が満ちているから不愉快な気持ちにさせられる。

こんな人間が居てもいいのか。
佳乃の父が彼に怒りをぶつけるシーンに異常に感情移入してしまったのだが、その所以は増尾だ。

社会に溢れる悪意の具現化のような増尾を岡田将生君が熱演。
こんな演技も出来るなんてと驚いてしまいました。もう単なるイケメン若手俳優なんて括りで彼を扱ってはいけませんね。本当に素晴らしい演技で、恐怖と憎悪を持ってしまいました。


殺人を起こし、不安と恐怖で押しつぶされそうになっている祐一郎は光代と出会う。
事件の発端となった出会い系サイトでの出会いというのがまた皮肉であるが、
そういったモノを使わなければ出会えなかったという事に二人の今までの人生が集約されていると思った。

祐一郎と同様に、何も無い田舎町で毎日毎日同じことを繰り返し、生まれた土地から一歩も出ること無くこのまま自分の人生が終わってしまうのではないか。

閉塞感と空虚感に満ちた日々からの脱却のきっかけとして、光代は「誰かに本気で出会いたかった」のだろう。

確かに祐一郎と出会う事で彼女の人生は大きく変わった。
殺人者である祐一郎との逃亡生活という普通ではない新たな人生を彼女は得た。

それが例え地獄へ続く道であっても彼女にとってはこの上ない幸せな時であったし、一番輝いた時でもあった。

またこの異常な生活が更に祐一郎との愛を深めることとなったのではないだろうか。

光に照らされることのない二人は逃亡によって照らし出され、それが生きていることへの実感に繋がっていたようにも思える。

灯台でのシーンは二人だけの世界であり、祐一郎がやっと“照らし”見つけ出したもっとも欲しかったもの=光代という印象を強く受けた。


しかし二人の行いによって悲劇と憎悪はさらに広まっていく。
被害者の佳乃とその家族。そして祐一郎の家族、光代の家族・・・

人の幸せを、人生を奪った人間が幸せになることは出来ないし、一人の人間ではなく多くの人間の幸せと人生を祐一郎は奪ったという避けることはできない現実。


しかしでは「悪人」は祐一郎なのか?と簡単に言う事が出来ないのが本作。

誰が悪人で誰が善人なのかは明確には描かれていない。
それは、人は誰しも善と悪を内に秘めた存在であり、
善と悪の境界線は曖昧であるという証である。
また誰が悪人かは主観によって分かれるものであると思う。



本作は多くは語らない。
寧ろセリフも音楽もない居心地悪い雰囲気に包まれた無音のシーンも登場する。
本で言う行間と言いますか、その無音の中に多くのセリフが詰め込まれ、観客はそれを読み取るという演出が何とも上手い。
現実をその度に突きつけられ、観客は考える訳です。


ずっと暗い画面がラストカットで明るくなるという演出も効果的でしたし、音楽もまた各者の揺れる心理を上手く表現していました。

何より各役者の演技は本当に素晴らしい。
モントリオールで受賞した深津絵里さんは勿論素晴らしいのですが、特に私は妻夫木さんの演技が見事だったと思いました。
最初の車中での表情が一変するシーンは祐一郎の秘めたる狂気を感じましたし、光代と居る時の子供の様な表情であったり、細かい表情の演技がもはや台詞となっていました。





彼らの逃亡の先には何があり、何が残るのか。


エンドロールの歌を聞きながら涙を拭かず、しばし自分なりの結論を導き出そうと考えさせられる作品です。



※追記はネタばれです。作品の結末に触れておりますのでご注意ください。


※以下ネタばれです。作品の結末に触れておりますのでご注意ください。



警察が踏み込む寸前、祐一郎は光代の首を絞め「俺はあんたが思っている人間じゃねぇ」と言います。
しかしの形相は狂気ではなく悲壮感に満ちた何とも言えない表情でした。

馬乗りになって光代の首を絞めているところを警官に引き離される。

引き離された時に祐一郎は必死に光代の手に触れようとし、横になっている光代は実に印象深い表情をしている。

祐一郎がした行為は殺意ではなく愛情。光代を守るために彼は「悪人」となった。
それを光代は分かったからか、私にはあの涙を流し横たわる光代の表情が実に美しく、どこか幸せそうに思えました。
おそらくここは解釈分かれるかと思います。

祐一郎は最初はそれほど自分が「悪人」であるとは思っていないと思います。
彼が自覚したのは光代を愛するようになってからではと思うからです。

しかし、世間が、そして祐一郎本人が「悪人」であると思っても、恐らく光代は祐一郎を信じたいし、悪人とは思っていない。
祐一郎の行いが例え悪と分かってはいても。

ラストの「やっぱり彼は、悪人なんですよね。」の台詞にはそんな光代の複雑な想いが込められていると思いました。


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【好きな俳優】
堺雅人、堤真一(特にこの二人が好き!)、大沢たかお、織田裕二、天海祐希、深津絵里

【舞台】
劇団☆新感線に嵌まってます!
ここ最近毎月観劇。

観劇予定: 時計仕掛けのオレンジ / テンペスト / シェイプオブシングス / NODA MAP・南へ / 劇団新感線・港町純情オセロ 


【映画】
洋画、邦画、韓国、香港とジャンル問わず何でも観てます。
最近は邦画鑑賞率高いです。


【ドラマ】
踊る大捜査線のファンでNW捜査員。

SP-警視庁警備部警護課第四係-が心底好き。


【小説】
佐々木譲、今野敏、貫井徳郎、雫井脩介、横山秀雄、海堂尊を好んで読みます。


■物凄いマイペースにやっているので不定期更新です。
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書かない or かなり時間が経ってから書くこともあります。

■映画、舞台、好きな俳優、ドラマの話が多めです。
感想はあくまで私個人のものなので「あ~この人はこう感じたんだ」程度に受け止めてください。



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