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観劇 『K2』

作:パトリック・メイヤーズ
演出:千葉哲也
出演:堤真一 (ハロルド)、 草なぎ剛 (テイラー)


< あらすじ >
世界第二位の高峰「K2」登頂に成功した物理学者のハロルドと地方検事補のテイラーは
下山途中の8,100メートル付近で遭難してしまう。
しかもハロルドは足を骨折してしまい、身動きが取れない。
氷点下40度、十分な装備もなく、酸素も薄いという極限状態に置かれた二人。
お互いの人生を語り振り返るうちに、迫りくる死を意識しながらも懸命に下山を試みるが・・・




観劇日:2010年11月25日 ソワレ @世田谷パブリックシアター 








極限状態に置かれたのは何もハロルドとテイラーだけではなく、この舞台を観たい方全てだったのではないだろうか・・・それ程この舞台のチケット争奪戦は凄かった。


今回はもしかしたら取れないかもと思っていたら幸運にもチケットを取ることが出来ました。
なので、この舞台はかなりの特別感がありました。


堤さんの髭は最初見た時驚きましたが、役作りだったんですよね。

今回は(というか“も”)ネタばれで感想を書いていこうと思います。



※以下ネタばれですのでご注意下さい。




『At home at the ZOO』と同様、今回の演出も千葉哲也さん。
『At~』も舞台装置を始め照明等、各演出が心情を投影している印象を受けたのですが、
今回の演出も良いのです。



開演前の場内には吹雪の音が流れており、もうそこはK2の世界。

そして幕が上がると同時に客席へ白い霧(というか雪)が流れ込み、まるで雪山に迷い込んだかのような錯覚を覚える。
そして視界が晴れると目の前には巨大な氷壁が出現する。

氷壁の向こうには雪山が見え(これがまた見事な遠近感)、劇場を一瞬にして雪山に変えてしまった。
この演出にまず心を鷲掴みされました。
物凄く感動したのです・・・白い霧が客席を徐々に包みこんでいき、氷壁が出現する様が幻想的で。


霧が晴れると氷壁中央にある狭い岩棚に黄色いシートを被り、身を寄せ合っている二人が現れる。



何とか山の途中にあった岩棚で一晩やり過ごしたテイラーとハロルド。
テイラーは目覚めると生きていたという事実を喜ぶ。
一方のハロルドは意識が朦朧としているのかテイラーの問いかけに対する反応が鈍い。
ここで二人は全く違うタイプの人間なのだなということが伝わります。


というか・・先に『ハロルドが足を骨折し~』という事を知っていたので「え、もう既に危ない状態なの!?」とかなり冷や冷やしたので、必死にハロルドを起こそうとするテイラーと同じ気持ちになりました、


下山の為の装備点検を始めるテイラーは未だ希望に満ちていて、とても生き生きとしているように思える。そんなテイラーと違ってハロルドはテイラーと行う準備点検もどこか身が入っていなよう。



下山出来る可能性がほぼ無いことを既に悟っているようにも思えるこの態度。
そんなハロルドにテイラーは「自分たちがこの岩棚で生き延びたことは普通に考えてあり得ない。だから自分達には未だ運があるんだ」と鼓舞する。


このテイラーの言葉に感化されたのか、ハロルドはテイラーと共に下山への希望にかける。
そして上部に残された下山に必要な一本のザイルを取りに戻ることを決意する。
必ず二人で降りるために...。



氷壁を登っていくテイラーはチャレンジする度にハロルドに「何か話してくれ」と言う。

テイラーが登り、再び岩棚へ戻ってくるまでハロルドは自身が学んだ物理学や影響を受けたアインシュタイン、宗教、そして学生時代の自分や怪しげな怪物話などをする。

ハロルドという人は物理学者というからお堅いキャラクターなのかなと思いきや、実はそうではないんですよね。確かに理屈っぽいのですが、結構茶目っけ(ん・・死語?笑)がある人。

劇中何度か下系のセリフが出てきますが何でしょう・・何故か堤さんが言うとそういったセリフもすっと入ってくるのですが、草なぎ君が言うと何だか違和感を感じてしまいました。いや、別に堤さんがよく下ネタを言っているとかではなくて(野望篇のインタビューで岡田君が言っていたっけ(笑))(^^ゞ

一方のテイラーは最初の明るく前向きな姿から草なぎ剛=良い人役を演じるイメージがあったので、今回もそうなのかと思いきや、実は違う。



それはザイルを取るために行った際に起きた雪崩から一変する。
状況も、精神状態も何もかも。


この雪崩、「雪崩が起きるかもな」と二人が言っていた時はどうするのだろうと思っていましたが、本当に雪崩起きました・・・世田谷パブリックシアターで雪崩起こさせたんですよ。

氷壁のセットだけでも凄いと思っていたのに雪崩までやるとは本当に本公演の演出はスケールが大きい。
二人に闇が覆いかぶさりそして一気に雪の塊が落っこちてくるのです。
その雪(発砲スチロールと紙でできているのかな?)の量が多いので、客席まで迫ってくるという迫力。
前列のお客さんは雪まみれになっていました。



この雪崩でテイラーの平常心も崩れ落ちたのです。
あたり一面真っ白な雪景色、氷点下40度の閉塞された、まるで孤島に居るかのようなこの状況、突然死への恐怖に直面し狂気がテイラーに宿る。
それを冷静に落ち着かせようとするハロルド。



やがてテイラーは自身の事を語り始める。
地方検事補である自分の仕事について、女性関係について。

ここで語られる話は当初の陽気な姿とは真逆の話である。
自身を社会的害悪から守るかの如く他人を攻撃する生き方をし、自分はハロルドの様な妻や子が居る温かい家庭はない、必要ないと強く言うのである。
しかしこの生き方は恐らく本心とは違うような気がする。

テイラーは人生の孤独や焦燥感から逃げているように思える。
そんなテイラーが「俺が好きなあんたが」と言うのだから、内心ハロルドの様な人生にあこがれると共に、ハロルドに自身の心の隙間を埋める「兄」や「父」を見、求めていたのではないかと思った。



“感情の暴露”、それは互いに信頼しあった者同士でしか為せないことである。
その強い信頼関係からハロルドはある決断をするのです。


自分がもうテイラーと一緒に下山する力が残されていないと悟ったハロルドは、テイラーに自分を残し下山するよう説得する。しかしテイラーは拒否をする。


もしハロルドを残して下山したとしてもその後の人生で後悔し続け、毎日罪悪感に苛まれる事になる・・・。
ハロルドの気持ちもテイラーの気持ちもどちらも分かるし、どちらも正論。
テイラーにとってハロルドはとても大切な人であり、「ずっと友達は欲しかった。そして出来た友達はお前だ」と言うようなセリフから本当に特別な存在になっていたんでしょう。



そんなハロルドを置いて自分だけ助かる事なんて出来ない、したくないというテイラーの気持ちに同調してこのシーンから私の涙が出始める訳です・・・・
此の時の草なぎ君の演技が響いたんですよね。

前半の怒鳴る演技は何だか浮いているような(すいません;)気がしたのですが、ここのシーンはテイラーの真実の姿=純粋さが現れていたからか、草なぎ君ともマッチしていたように思えたのです。
先述のとおり“草なぎ剛=良い人”のイメージが強いからかもしれませんね。




ハロルドを置いて一人下山するなら一緒にここで一生を終えると言うテイラーにハロルドは言う、シンディー(妻)に触れたい、エリック(息子)のこれからの成長を見たい・・・。
死を予期したハロルドは懇願する「俺の代わりに」と言う様にお前が下りれば俺の願いは叶うのだ、だから最後の願いを聞いてくれと。




ハロルドの願いを聞き入れたテイラーは下山することを決意する。



テイラーが下山している事を確認しつつ、ハロルドは自身の人生を改めて振り返る。
何て自分は自分勝手に生きていたのだと悔やみ、妻と息子への愛を叫ぶ。



「人生とは受け入れることである」




ハロルドがテイラーに話したこの言葉。

前半と終盤の二人の変化はまさにこのセリフが掛っていて、終盤の二人の姿は逃げずに戦い、「全てを受け入れた」姿なのだなと思いました。



ハロルドは下山していくテイラーを確認しながら白い一匹の目が見えない狐の話をする。
誰に聞かせるでもなく、自分の為に話すのです。

この話は宗教的で、日本の神話にも似たような話があったような・・・と思ったお話なのですが、
この狐に一人岩棚に残され、死が迫る自分を重ねているんですよね。


そして語っているうちにハロルドは気付く。目が見えない狐が何故じっと死を待てたのか
・・・それは次に生れる時は目があることを知っていたからだと。



これはテイラーが下山することで再びハロルドに命が宿る。

テイラーが生きている事がハロルドが生きた証であり、
テイラーは山での出来事を、父の雄姿をエリックに伝えることが出来る。
妻シンディーにもハロルドの愛を伝えることが出来る。



二人は永遠に“見えないザイル”で繋がっているのだ。
そして彼らの記憶の中にハロルドは生き続けると思うから・・・



自分は新たな“姿”で生き続ける。
来世でまたシンディーとエリックに会える(ハロルドは信仰心が強いと思うので)と思ったというか悟ったのでしょう。



最後のハロルドの表情はとても穏やかで、幸せそうにも見えました。




何だか『クライマーズハイ』の安西のセリフ「下りるために登るんさ」が浮かんだんですよね、このラスト。
ハロルドもテイラーも下りたんですよね・・・心に抱える色々なしがらみや、不安等から。
そして新たな未来へと歩み始めた・・。



このラストに辿りつくまでの照明の使い方が上手いなと思ったのが、迫りくる死の恐怖と闘うハロルドをじょじょに闇が覆うあの演出。

空が段々暗闇と化していくんですよね。
また、ラストなんてハロルドにスポットが当たり、堤さんの素晴らしい表情と氷壁の美しさが際立ち、まるで一枚の絵のようでした。




この舞台、改めて堤さんの演技の素晴らしさを実感した舞台でした。
堤さんは足を骨折しているという役なので、身動きが出来ず、最初から最後まで座りっぱなし。なので語調の変化や表情でハロルドの心情の変化を表現しなければならない。
制約された中での表現というのはとても難しく、大変なのではと思いますが、それをやってしまう・・・しかも自然に。表情に、台詞にハロルドの魂を乗せた演技をされるのです。
なのでじんわりとそれこそ雪解けの様な感動と悲しみが染みわたる。自然に涙が出る演技・・・
また私を惚れさせるのかと(笑)




草なぎ君は堤さんと違い動きが多く、氷壁の上り下りはとても大変だったと思います。
しかもセリフを話しながらですからね。
神経質で感情の起伏が激しいテイラーを力いっぱい演じていたように思いました。
終盤の純粋さが出た瞬間は本当に良かったです。




カーテンコールは3回、スタンディングオベーション!
私も「座って拍手なんて失礼だ」と思い直ぐに席を立ちおもいっきり拍手をしました。


パンフレットで「ドキュメンタリーの様に見える芝居になればいい」と千葉さんがコメントしておりましたが、まさにドキュメンタリーの様で、ずっと二人を見守っている感覚に成りました。



これは体感しないと味わえない感動ですね・・・だから舞台は面白い。
何だか大きなモノを貰った舞台でありました。



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プロフィール

るい

Author:るい
【好きな俳優】
堺雅人、堤真一(特にこの二人が好き!)、大沢たかお、織田裕二、天海祐希、深津絵里

【舞台】
劇団☆新感線に嵌まってます!
ここ最近毎月観劇。

観劇予定: 時計仕掛けのオレンジ / テンペスト / シェイプオブシングス / NODA MAP・南へ / 劇団新感線・港町純情オセロ 


【映画】
洋画、邦画、韓国、香港とジャンル問わず何でも観てます。
最近は邦画鑑賞率高いです。


【ドラマ】
踊る大捜査線のファンでNW捜査員。

SP-警視庁警備部警護課第四係-が心底好き。


【小説】
佐々木譲、今野敏、貫井徳郎、雫井脩介、横山秀雄、海堂尊を好んで読みます。


■物凄いマイペースにやっているので不定期更新です。
なるべく観たものは全て感想を書きたいなと思っていますが
書かない or かなり時間が経ってから書くこともあります。

■映画、舞台、好きな俳優、ドラマの話が多めです。
感想はあくまで私個人のものなので「あ~この人はこう感じたんだ」程度に受け止めてください。



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